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プロ野球

源田や金子、周東らに見るスペシャリストの究極思考。「走らない」盗塁の脅威と、塁を奪うリスク

氏原英明

2019.12.30

源田(左)と周東(右)。ともに脚を武器にする2人だが、その思考法には大きな違いがある。写真:徳原隆元、金子拓弥(THE DIGEST写真部)

源田(左)と周東(右)。ともに脚を武器にする2人だが、その思考法には大きな違いがある。写真:徳原隆元、金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 2019年は「脚」が再評価されたシーズンかもしれない。

 特に育成から這い上がり、25盗塁を決めてソフトバンクの日本一に貢献した周東佑京の存在は改めて「走」や「盗塁」の魅力を見せつけた。

 もっとも、球界には脚力に秀でた選手がたくさんいる。

 パ・リーグの連覇を果たした山賊打線には3人のスピードスター、金子侑司、源田壮亮、外崎修汰がいるし、日本ハムには過去3度の盗塁王・西川遥輝や中島卓也、ロッテには今季、キャリア初めてとなる規定打席を達成した荻野貴司、チームメイトの中村奨吾、ルーキーながら盗塁王のタイトルを獲得した近本光司(阪神)、トリプルスリーを含む3度の盗塁王を獲得している山田哲人(ヤクルト)などである。

 脚の話になると、最も注目されるのが盗塁だろう。昨今はその多寡だけを語るだけではなく、「成功率」までを比較の対象とするなど、注目度は増してきている。
 
 とはいえ、盗塁のスペシャリストでも、さまざまなタイプがいる。
 
 例えば、西武の3人のうち、今季パ・リーグの盗塁王になった金子は、とにかく、塁に出れば、果敢に狙うタイプだ。早いカウントからでも立ち遅れることはない。一方、外崎は成功率を気にするタイプで、なおかつ、打者が待機しないでいいように、いく・行かないの決断が早い選手でもある。そして、源田は、状況判断をして盗塁を狙う。投手のクイック、味方の打者、試合展開などである。

 盗塁の奥深さを戦略として体現している3人とも言えるが、これは先に挙げた盗塁を得意とする選手たちにも共通している。

 荻野は「理想は成功率100%。クイックで見て、走る・走らないを極端に決めてもいい」と話していたし、中村は「僕にはまだ技術がない。将来的にはわからないけど、荻野さんみたいな経験がないので、今は行けると思ったら積極的に行くようにしている」と言っていたことがあった。

 彼らを見ていて思うのは、盗塁は数や成功率など数字だけで語れるものではないということである。そして、裏を返せば、それほど、盗塁は奥深いものでもある。

 盗塁が決まれば、一気にチャンスは拡大するが、失敗のリスクは常につきまとう。投手のクイックや捕手のスローイング、カウントなどによって個々が判断していくが、野球というチームスポーツで重要なのが状況判断だ。

 得点差が開いている状況はさておいて、盗塁をしなくてもいい場面がある。

 例えば、僅差の試合。
 盗塁が期待できる選手が一塁走者であれば、盗塁を期待したくなるのだろう。得点圏に走者を置いて、一打でホームインできるからである。しかし、盗塁のリスクや次打者がどういうタイプであるかを考えた時に、その選択はさまざまに変化する。

 つまり、盗塁リスクを取るか、次打者への期待値を取るかになる。

 盗塁リスクを重視するなら、走者を一塁のままにしておいて、次打者の長打に期待して長駆ホームインを狙ったほうがいい。次打者がホームランを打てる打者なら、悪い策ではないだろう。

 ただ先の塁を奪えばいいということではない。
 
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