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プロ野球

坂倉将吾が挑む捕手王国の壁。會澤への挑戦権を得るために起こしたアクションとは

前原淳

2020.01.06

昨季は51試合に出場したが、大半が代打。今季は捕手としての成長に期待したい。写真:朝日新聞/日刊スポーツ

昨季は51試合に出場したが、大半が代打。今季は捕手としての成長に期待したい。写真:朝日新聞/日刊スポーツ

 侍ジャパンの正捕手を務める會澤翼をはじめ、経験豊富なベテラン石原慶幸、2017年甲子園を沸かせた広陵高出身の20歳・中村奨成と、広島は捕手王国を築いている。群雄割拠の2020年、高卒4年目を迎える坂倉将吾が會澤に次ぐ2番手捕手の座を虎視眈々と狙っている。

 16年ドラフト4位で日大三高からプロ入りした坂倉は、1年目からウェスタン・リーグ2位の打率.298を記録するなど持ち前の強打で台頭。終盤には一軍昇格も果たし、球団高卒新人捕手としては1965年の衣笠祥雄以来2人目プロ初安打を記録した。

 一軍出場試合数は、1年目が3試合、2年目が9試合。それが3年目の昨季は、左の代打の一番として起用され、51試合に伸ばすなど飛躍のきっかけをつかんだ。また、持ち前の打力を生かすべく、外野にも挑戦。4試合でスタメン出場した。

 一方で、悔しさも残った。当時の担当コーチの意向もあり、捕手としての先発出場は一度もなく、途中からマスクをかぶった試合も3度しかなかった。捕手にとって求められる経験を得る機会を十分に与えられたとは言い難い。それだけに「やっぱり捕手として出たい」と捕手へのこだわりを一層強くした。
 
 秋季キャンプでは新たに一軍担当となった倉義和バッテリーコーチから捕手としての基礎を徹底的に叩き込まれた。一部の首脳陣からは三塁挑戦のアイデアも出たようだが、二軍時代からの指導者は「會澤の壁は高いと思うが、近づけるようにレベルアップさせたい」と捕手一本で勝負させた。坂倉もそのつもりだった。若手主体の秋季キャンプでも、早出練習よりも先に打撃マシンの球を受けたり、素振りをしたりと自らを追い込んだ。

 年明けには自ら志願した炭谷銀仁朗(巨人)との合同自主トレに参加する。「(春季キャンプで)秋と同じじゃいけない。すぐに変わるようなものではないけど、継続していけるような方向性を見つけられれば」。炭谷は球界屈指の捕球技術を誇り、WBCに2度出場するなど経験も豊富。普段は人見知りな性格の坂倉も「自分から聞かないと意味がない」と意を決して関係者に頼み込んだ。

 チームにとっても、會澤に次ぐ捕手の台頭は全体の底上げにつながる。鈴木も契約更改後の会見で「優勝するためには下の子たちが1人でも出てこないとやっぱり難しいのかなと思う」と王者奪還には若手の成長が不可欠と説いた。同じ東京出身で、助言ももらっている坂倉が応えないわけにはいかない。「やらないといけない」。まずは2番手の座を狙っていく。

文●前原淳

【著者プロフィール】
1980年7月20日、福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。0大学卒業後、編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。華やかなプロ野球界の中にある、ひとりの人間としての心の動きを捉えるために日々奮闘中。取材すればするほど、深みを感じるアスリートの心技体――。その先にある答えを追い続ける。『Number』などにも寄稿。
 

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