2020年の中日ドラゴンズのブレイク候補として、私はプロ２年目の梅津晃大を挙げたい。18年ドラフト２位で入団した梅津は、プロ1年目の昨季はわずか６登板ながら４勝１敗、防御率2.34と素晴らしい成績を残した。春先に右肩の怪我を発症して出遅れながら、二軍で焦らず地道な調整を続けたことで、８月以降は先発ローテーションの一角を担った。

　梅津が活躍できたのは、打者を圧倒する「安定して速い」ストレートがその要因として挙げられる。以下で昨季の投球データをベースに、詳しく見ていこう。

　梅津は昨季トータルで305球のストレートを投じたが、その平均球速は146キロと先発投手では速い部類に入る。ストレートが速ければ速いほど当然打者の対応も難しくなるし、持ち球であるスライダー、カーブ、フォークなどの変化球も効果的に使えるようになり、好成績につながりやすい。実際、千賀滉大（ソフトバンク）や山本由伸（オリックス）を含め、球界を代表するレベルの先発投手は、ストレートの平均球速が145キロを超える投手がほとんどだ。
  　さらに梅津の場合、球数にかかわらず常に「安定して速い」のが特徴だ。ストレートの平均球速を20球ごとに区切って見てみると、「投げ始め」の20球目までが146.6キロ、「降板間近」の80球以上でも146.2キロと大差ない。もちろん、速いストレートを投げられればそれだけで成功できるわけではないが、エースとして安定して長いイニングを投げるための「最低限の素養」は十分備えていると言える。

　一方で、ストレートが速いのは「過保護な起用法」が理由なのでは、という反論も容易に想像できる。梅津は６登板中５登板で100球未満、残る1登板も102球で交代し、登板間隔も常に中６日以上を守っていたからだ。学生時代から怪我に悩まされた投手だけに、これは当然の指摘と言えるし、通年での活躍となるとどうなるかは確かに未知数な部分はある。