今季のセ・リーグ投手三冠の山口俊(巨人)のメジャー移籍を報じるニュースを見たとき、多くの人間があの男の心情を慮ったに違いない。
巨人のエースとして君臨しながら、2019年シーズンは不調に陥り、自身もまたメジャー志望を持つ、菅野智之である。
今季の菅野のスタッツを振り返ると、決して悪い数字ではない。初めて規定投球回に届かなかったとはいえ、22試合に投げて11勝6敗。防御率3.89。過去5年連続で防御率2.40以内に抑えていた菅野からすれば、らしくない数字であるのは間違いないが、それでもしっかり貯金を作っているは見事と言えるだろう。
しかし、怪我による登録抹消が3度もあり、自責点4以上が7試合。いつもの輝きは見られなかった。年間を通して、持病である腰の状態が芳しくなかったのが原因だ。
そんな今季の菅野を象徴していたのが、日本シリーズ第4戦だった。ソフトバンクに日本一を決められ、彼に黒星がついた試合である。
背水の陣で迎えた舞台だった。
9月4日の中日戦で腰痛が再発し、15日の阪神戦で復帰するも、状態は上がらなかった。シーズン終盤とC Sの登板を回避して、日本シリーズは開幕3連敗してからの出番だった。
立ち上がりは好調時に近いピッチングだった。ストレートを軸にしながら、変化球を散りばめて打者を打ち取っていく。3回を1安打無失点に抑えるピッチングは上質なものだった。
しかし4回、痛恨の一発を浴びる。走者を二人置いたところで、グラシアルを迎えると、簡単に追い込みながらも最後はアウトコースのスライダーがやや浮いたところを捉えられた。相手に試合の主導権を明け渡す痛恨の3点本塁打だった。
この対決は、投手対打者の駆け引きを垣間見た珠玉の名勝負だったが、結果から言えば、菅野が根負けした。
捕手の小林誠司がこう回想している。
「(グラシアルは)変化球を意識してタイミングをとっていたのが分かったので、ストレートでしっかり追い込めた。そうしてこっちの有利なカウントまで持ってきていたんですけど、まとめの部分で攻めきれなかったですね」
変化球待ちの相手に対して、ストレートで追い込む。バッテリーは理想的な形に持っていきながら、最後は変化球勝負を選んだが、スライダーがやや膨らんだ分、それを見逃してもらえなかったのだ。
5回以降は立ち直り、味方の援護を待つ粘りのピッチングは見事だったが、7回にエラーがらみで失点し、菅野はマウンドを下りた。
そして、チームも最後まで跳ね返すことができず、試合もそのまま敗れた。
いわば、グラシアルへの「1球」が命取りになった。
3連敗と王手をかけられた中で、菅野に土がついたことは完全敗北を意味し、チームにとっても、本人にとっても受け入れがたい結果だったに違いない。
ただ、試合後の菅野を追いかけてみると、サバサバとした表情で、自身の1年間を見つめていたのが印象的だった。
巨人のエースとして君臨しながら、2019年シーズンは不調に陥り、自身もまたメジャー志望を持つ、菅野智之である。
今季の菅野のスタッツを振り返ると、決して悪い数字ではない。初めて規定投球回に届かなかったとはいえ、22試合に投げて11勝6敗。防御率3.89。過去5年連続で防御率2.40以内に抑えていた菅野からすれば、らしくない数字であるのは間違いないが、それでもしっかり貯金を作っているは見事と言えるだろう。
しかし、怪我による登録抹消が3度もあり、自責点4以上が7試合。いつもの輝きは見られなかった。年間を通して、持病である腰の状態が芳しくなかったのが原因だ。
そんな今季の菅野を象徴していたのが、日本シリーズ第4戦だった。ソフトバンクに日本一を決められ、彼に黒星がついた試合である。
背水の陣で迎えた舞台だった。
9月4日の中日戦で腰痛が再発し、15日の阪神戦で復帰するも、状態は上がらなかった。シーズン終盤とC Sの登板を回避して、日本シリーズは開幕3連敗してからの出番だった。
立ち上がりは好調時に近いピッチングだった。ストレートを軸にしながら、変化球を散りばめて打者を打ち取っていく。3回を1安打無失点に抑えるピッチングは上質なものだった。
しかし4回、痛恨の一発を浴びる。走者を二人置いたところで、グラシアルを迎えると、簡単に追い込みながらも最後はアウトコースのスライダーがやや浮いたところを捉えられた。相手に試合の主導権を明け渡す痛恨の3点本塁打だった。
この対決は、投手対打者の駆け引きを垣間見た珠玉の名勝負だったが、結果から言えば、菅野が根負けした。
捕手の小林誠司がこう回想している。
「(グラシアルは)変化球を意識してタイミングをとっていたのが分かったので、ストレートでしっかり追い込めた。そうしてこっちの有利なカウントまで持ってきていたんですけど、まとめの部分で攻めきれなかったですね」
変化球待ちの相手に対して、ストレートで追い込む。バッテリーは理想的な形に持っていきながら、最後は変化球勝負を選んだが、スライダーがやや膨らんだ分、それを見逃してもらえなかったのだ。
5回以降は立ち直り、味方の援護を待つ粘りのピッチングは見事だったが、7回にエラーがらみで失点し、菅野はマウンドを下りた。
そして、チームも最後まで跳ね返すことができず、試合もそのまま敗れた。
いわば、グラシアルへの「1球」が命取りになった。
3連敗と王手をかけられた中で、菅野に土がついたことは完全敗北を意味し、チームにとっても、本人にとっても受け入れがたい結果だったに違いない。
ただ、試合後の菅野を追いかけてみると、サバサバとした表情で、自身の1年間を見つめていたのが印象的だった。