プロ野球

2020年阪神の「理想」のオーダーは?左偏重の打線を改善する「1番・北條」「4番・大山」が肝

氏原英明

2020.01.14

大山に4番を任せるのは時期尚早かもしれないが……。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真)

 キャンプインまであと半月。この時期の楽しみといえば、今季の布陣を夢想することだろう。どうすれば、チームのポテンシャルを最大限に引き出せるのか。ここでは、現在の戦力を分析し、得点力向上が見込める「最良のオーダー」を考察する。

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 昨季、阪神は3位に滑り込みC Sファイナルまで進出した。
 
 当然、今季への期待は膨らむが、防御率1.38、40ホールドを記録したジョンソンが退団するなど、昨季の躍進を支えたブルペンの陣容が固まっていないのは不安要素だ。ただ、新外国人のエドワーズとガンケルを獲得し、日本人投手にも枚数がいないわけではない。"どう整えるか"というレベルにあり、大きな心配はいらない。

 問題は、得点数リーグ最下位の打線だ。新外国人・ボーアを獲得したのは明るい話題だが、厄介なのは、彼が一塁しか守れない左打者という点だろう。もともと打線はベテランの福留孝介、糸井嘉男が君臨する上に昨季の盗塁王・近本光司、キャプテンの糸原健斗と左打者偏重である。

 右打者といえば、ベストナインに輝いた梅野隆太郎と、ともに三塁をメインに守る大山悠輔と北條史也くらいしか計算できる戦力が見当たらない。一塁を守るマルテがいるが、ボーアを優先せざるを得ない。昨秋のキャンプでは大山を二塁でテストするなど新たなオプションを探っているのも、打線の選択肢を増やすためだろう。

 これらの要因を考慮して組み立てたのが、次のオーダーだ(△は左打者)。

1(遊) 北條史也
2(中)△近本光司
3(右)△糸井嘉男
4(三) 大山悠輔
5(一)△ボーア
6(左) サンズ
7(二)△糸原健斗
8(捕) 梅野隆太郎
9(投) ──
 
 現在の戦力でオーダーを組むのであれば、大山と北條を併用するのが得策と考える。

 昨季のC Sファーストステージでド派手な活躍を見せた北條を1番に据え、2番は近本、3番は糸井、4番大山、5番ボーアという並びだ。

 近本を2番にするのは、矢野燿大監督の野球観を考えてのものだ。

 投手起用やブルペンでの調整法などは現代的なアプローチを見せている矢野監督だが、打撃面の作戦は立ち遅れている。C Sでは5打点を挙げてヒーローになった北條に対して、翌日の1打席目に送りバントを命じたのが端的な例だ。

 足の速い近本に送りバントは必要ないから積極的に攻められる。その上で、クリーンアップを迎えれば、得点力は上がるはずだ。

 大山の4番は時期尚早かもしれないが、打率.266、本塁打9の梅野を起用するのは無理があるし、初めて日本のプロ野球で戦うボーアは開幕5番スタートが理想だろう。6番・左翼は福留ではなく、新外国人のサンズを入れた。あの広い甲子園の左翼を42歳に守らせて、攻撃も求めるのは酷というもの。右打者であるサンズを入れることで、打線のバランスも良くなる。

 左打者のクオリティはかなり高い。木浪誠也も、本来ならスタメンに組み込みたい選手の一人だ。ただ、右打者とのバランスを考えると外さざるを得ない。また、大山を二塁に回し、昨季、出塁率.381を記録したマルテを三塁で起用するのも手だろう。

 課題はやはり右打者の出来になる。セ・リーグは左投手に好素材が多いだけに、ひと工夫が必要になることは間違いない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

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【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。