高校野球

【甲子園熱戦レポート│6日目】19試合目での大会第1号にもベンチは沸かず。東海大相模の“サイレント・トリートメント”の舞台裏<SLUGGER>

氏原英明

2024.08.12

身長168cmの小兵・柴田が放った打球はライトスタンドのポール際に飛び込んだ。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

 その刹那、東海大相模ベンチはサイレント・トリートメントのような空気になった。

 和泉淳一部長が明かす。

「みんな悔しがってたんじゃないですかね。メジャーのサイレントトリートメントってあるんじゃないですか。あんな感じで、点数が入ったのに喜んでなかった。2年生に先を越されちゃったという思いがちょっとあるんだと思います」

 夏の甲子園が開幕して19試合目にして、ついに初本塁打が飛び出した。低反発バット元年の夏、最初に本塁打を放ったのは東海大相模の8番打者・柴田元気だった。「伏兵」と言えるタイプの打者だった。

「チームのみんなが打ってくるので、自分は守備に集中してチームバッティングをするだけと思っていた。まさか自分がホームランを打てると思っていなかったので、今も驚きです。内からしっかりバットを出して芯で捉えたので、いい打球が飛んだと思います」

 理想的なバッティングではあったものの、まさか、自身が"第一人者"になるところまでは想像できなかったようだ。

 試合展開としては欲しいところでの一発だった。2対0で8回表の攻撃。次打者は投手の藤田琉生だったが、代打が送られることが決まっていたのだ。僅差の投手交代は難しさもはらむだけに、柴田の本塁打がどれほど大きかったかは推してしるべしだろう。
 
 でも、なぜベンチはサイレント・リートメントのような空気になったのだろうか。

 意図していたのか。

「自分はホームラン打つタイプではないので、悔しいっていう気持ちがあったわけではないです。柴田は狙って打ったわけではないと思いますけど、みんながベンチで黙っていたのはまさか柴田がっていうのが大きかったと思います」

 そう話したのは1番バッターとして1回表に出塁して先制ホームを踏んだ才田和空だった。部長から「悔しがっているはず」と名を挙げられたうちの1人だ。

 柴田によれば、「低反発バット初本塁打」については前日からチームメイト同士で話していたのだという。果たして誰が打つのか。柴田は期待される側ではなく、期待する側として4番の金本貫汰や三浦誠登などに「お前が打つんじゃない?」と話していたそうだ。

 金本はいう。

「ホームランを僕が打つと言っていた本人が打ったのでびっくりしました。ホームランは狙ったら野球にならないので、狙わずに打った柴田がすごかったということだと思います。柴田は良いバッターなのは間違いないんで、ホームランを打ってもおかしくはないと思います」
 
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