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プロ野球

オリックスの"守備の名手"安達了一が現役引退会見「守れなくなったら引退というのがありました」【オリ熱コラム2024】

どら増田

2024.09.14

ゴールデン・グラブ獲得こそないが、日本球界屈指の守備の名手として鳴らした安達。13年間の現役生活にピリオドを打つ。写真:野口航志(DsStyle)

ゴールデン・グラブ獲得こそないが、日本球界屈指の守備の名手として鳴らした安達。13年間の現役生活にピリオドを打つ。写真:野口航志(DsStyle)

 9月13日、今シーズン限りでの現役引退を発表した安達了一が京セラドーム大阪で記者会見を開いた。会見場に現れた際には笑みも浮かべていたが、会見では時折、感無量の表情を見せるなど、感情が高ぶる場面もあった。引退セレモニーは盟友T-岡田とともに24日の西武戦後に行われる。この日のチケットは完売間近となっており、超満員のファンに見送られるのは確実だ。

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 安達は「実感はまだないんですけど、寂しい気持ちもありますし、スッキリした気持ちもある」とした上で、引退を決めたきっかけとして「自分の中で、守れなくなったら引退というのがありましたので、ほっともっと(5月1日のロッテ戦)の試合で1イニング3失策してしまったあたりから様子がおかしくなって、悩むようになった」と心の内を明かした。

 球界屈指の守備の名手として知られていただけに、この日の3失策はグラウンドコンディションがかなり悪かったとはいえかなりショックだったようだ。ただ、「そういう中でも家族だったり、周りのみんなが励ましてくれて、ファンの皆さんにもいっぱい声を掛けてもらって頑張ることができた」という。

 プロ13年間で印象深い試合は「良い試合は印象に残っているのはいっぱいあるんですけど、近いところで言ったら、あまり良くないんですけど、やっぱり失策した試合が自分の中でずっと残ってしまいます。自分の分かれ道だったのかなと思いますね」と振り返った。

 2016年には故・安倍晋三元首相も悩まされた難病である潰瘍性大腸炎を発症。炭酸水に浸かったりしながら、日々病気と向き合ってきた。「素直に言いますと、その時は辞めようと思いました。それでも家族の支えや、ファンの皆さんが励ましてくれて、それで頑張ろうと思うことができました。周りの方が自分の病気に気を使ってくれて、自分がやりやすいようにしてくれましたので、本当に助かった」

 チームも安達の体調を考慮し、週休3日制にするなど柔軟な対応をとってきた。復帰戦では「大歓声をいただいて。あれは忘れられません。本当に泣きそうになりましたね。『僕も潰瘍性大腸炎です』とか『病気です』とか、そういう手紙がかなり多かったので。そういう方たちのためにもまだやらなくちゃいけないと思いながら野球を続けられた」と同じ病気に悩まされている人たちに勇気を与えられればと現役を続けてきた。

 ゴールデン・グラブ賞に縁はなかったが、紅林弘太郎がレギュラーに定着するまでは鉄壁の遊撃手としてチームのピンチを幾度となく救ってきた。「プロに入った時にバッティングでは生きていけないと思い、コーチの方に助けてもらいながら守備を頑張って、うまいと言ってもらえるようになりましたので。守備のおかげでここまでできましたので、後悔はありません」。

 同い年の岡田については「先にTが発表になったんですけど、自分も心の中では決めていたこともあって、話はしていました。チームが弱い時期にどうやって強くするかということをいろいろ話した仲でもありますし、低迷期から一緒にやっててまさか優勝できるとは思っていなかったので2人で喜び合えて良かったです」。

 奇しくも、同時に現役生活を終えることになった盟友にも「感謝です」と瞳を潤ませながらポツリ。最後にはその岡田が花束を持ってサプライズ登場。二人は「これからもオリックスの力になっていきたい」と口を揃える。

 最後に「オリックスでなければここまで使ってもらえなかったですし、3連覇、日本一も経験できました。本当に感謝しかありません」と13年間の現役生活を「感謝」という言葉で振り返った安達は、会見が終わりかけたところで「僕から一ついいですか?」と切り出した。

「今まで安達了一という選手を取り上げていただき、ありがとうございます」。報道陣からは盛大な拍手が上がり、安達を見送った。大病を抱えた際に「野球に対する考えが変わった。野球ができることに感謝したい」と話していたが、この経験をセカンドキャリアでも語り継いでもらいたい。

取材・文●どら増田

【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。

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