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「10失点した後ですら球場に来るのが楽しかった」今永昇太が振り返る充実のメジャー1年目と日本開幕戦への決意<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.10.08

15勝3敗、防御率2.91という素晴らしい成績でメジャー1年目を終えた今永。本人にとっても充実のシーズンだった。(C)Getty Images

 今永昇太(カブス)のメジャーリーグ移籍1年目を締めくくる、今季最終登板は実現しなかった。

【動画】【動画】シーズン最終登板でまた快投! 今永昇太、ナショナルズ戦で今季15勝目をマーク

「僕がどうこう言う問題ではないので、そういう風なチーム方針なんだなという感じ。......もしも明日、30登板目で7イニングを投げたら180イニングに届くので、平均投球回6回ですから、それが達成できれば良かったですけど」

 今永が9月29日の日曜日、シーズン最終戦のレッズ戦に登板しないと発表されたのは、実は前日のことだった。当の本人が2日前になっても、「いや、マジで知らされてないんです」と語り、クレイグ・カウンセル監督とトミー・ホットビー投手コーチも異口同音に、「Possible(可能性はある)」などと煙に巻いた理由は、謎のままである。その約1週間前、すでにカブスのポストシーズン進出の可能性がゼロとなり、「投げないだろう」と高を括っていた地元メディアでさえ、少しイラっとするほど意味のない「遅い決断」だった。

 何はともあれ、ようやくカウンセル監督が前日になって「怪我をするリスクと見返りを考えた」と話したことで、今永のシーズンは、周りの選手たちより1日早く終わったのである。

「15勝3敗という数字は正直、あまり気にしてないですし、それよりも他のスタッツで良いスタッツもあれば、悪いスタッツもあった。MLBに来る前からK/BB(奪三振と与四球の比)は意識していて、そこはある程度、良い数字が出たと思います。悪い数字は、特にfWAR(打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価した選手のチームの勝利への貢献度を示す指標)の方なんですけど、おそらく、野球にちょっとだけ詳しかったり、精通している人から見れば、僕のこの数字(3.0)って、そんなに良いものではないと捉える方が多分いるんですよ」

 正直、驚いた。セイバーメトリクス全盛の時代とは言え、「WAR」について語るのはかなりのマニアか、ファンタジー・ベースボール愛好家ぐらいのものだ。現役の選手が自らそれを口にしたのを初めて聞いたし、「fWAR」と「rWAR」の2種類あるうちの一つをはっきり言うなんて、想定外の出来事だった。
「僕のWARが低い理由はおそらく、被本塁打が多いからなんです。打球が飛んだところが良かったねとか、(打球速度が)100マイルでも正面に飛んだね、とかありましたけど、じゃあ、味方の守備を度外視した時にどうなのか。そういうのを僕はすごく気にしてますし、たとえば(新人王争いの本命でもあるパイレーツの)ポール・スキーンズなんかは、WARが6ぐらいある。僕より投球回が少なくても、彼はチームの勝利に貢献しているんだと考えると、決していい数字が出たとは思ってないです」

 だから、と言うわけではないだろうが、The Rookie of the Year=新人王についてはあまり、気にしてない様子だった。

「僕、31歳なんですけど、新人王って言われると22歳とか、23歳とかに戻った気分になれるので、そういう意味では欲しい賞ではありますよね。若返りたいとか、そういう気持ちです。2年目からいきなり大ベテランになりますけど」

 今永はそう言って快活に笑った。オールスター・ゲームに選出された時にも感じたが、賞を含む名誉を与えられるかどうかは彼にはコントロールできないし、結果に付随するものだ。本当の意味で彼がキャンプの頃から目指していたのは、一年を通じた活躍とその先にある未来だけだったような気がする。

「前半戦は真っ直ぐ、チェンジアップが良くなかったら、もう試合を作れないような状態があった。後半戦はどっちかが悪くても、どっちも悪くても、何かしらで対応できた。調子が悪いんだろうなと見られても、最低限の最低限は出来るようにはなったかな? という学びはありましたね」
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「こっちに来た以上はアメリカ人になるってのがベストだと思っている」