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MLB

開幕投手に指名された今永昇太と菊池雄星――メジャーで確固たる地位を築いた2人のレフティが視界に捉える「その先」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.02.26

今永(左)はメジャー2年目、菊池(右)は7年目で初の開幕投手を担う。(C)Getty Images

今永(左)はメジャー2年目、菊池(右)は7年目で初の開幕投手を担う。(C)Getty Images

 カブスの今永昇太が、3月18日の日本開幕シリーズ第1戦に先発する=「開幕投手」になると報じられたのは、現地2月18日月曜日の午後である。

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 当日はロブ・マンフレッドMLBコミッショナーと、アリゾナ州でキャンプを行っている15球団の監督や、編成本部長(President of Baseball Operation)、ジェネラル・マネージャー(GM)が一同に介す「メディア・デー」だった。

 今永の「開幕投手」について、ジェド・ホイヤー編成本部長は、こう言った。

「(日本開幕シリーズの)第1戦に昇太が出場するのは当然だ。彼と(去年の開幕投手)ジャスティン・スティールの二択だった。二人とも素晴らしい。結局のところ、日本でプレーしているという事実が結論を簡単にしたと思う」

 さて、今永先生はどんな話をするのかな? と翌朝、カブスのキャンプ施設のクラブハウスに行くと、彼は日米の報道陣に瞬く間に囲まれた。そして、真面目な表情を崩さずこう言った。

「(開幕投手は)ある程度、頭の中にありましたし、光栄な気持ちです」。

――去年はシカゴでのホーム開幕戦で投げた。今年は日本での開幕戦で、ドジャースの山本由伸と投げ合う。

「まず考えなくちゃいけないのは、過去にMLBに挑戦してきた日本人選手の歴史の上に、僕らがこうやって投げ合うことが注目されているということ。まずは過去の日本人選手たちに感謝を申し上げますし、そういった方々のおかげで僕らがこういう風に注目してもらえるのが嬉しいです」

 いつになく、神妙な顔つきだった。

「僕、今年でプロ10年目ですけど、10年前の自分に『いつかメジャーに行って、東京で開幕してそこで投げるよ』って言われても、信じないと思う。当時はそれぐらいの実力でしたし、ここまで育ててもらった、僕の野球人生に携わってくれた方々にすごく感謝の気持ちです」

 今永の表情が崩れたのは、普段から仲の良い山本と投げ合うことに言及した時だった。史上初めて日本人同士が日本での開幕戦で投げ合うことが決定して間もなく、その山本から連絡が来たらしい。

「僕、ショッピング・センターで靴下を買ってたんですけど、そこに彼の知り合いの方がいて、その方を通して連絡が行ったんだと思いますが、『靴下、買ってる場合じゃないですよ!』って連絡が来ました」
 
――なんて返事したんですか?

「庶民派メジャーリーガーです、と」。

 庶民派=身近な存在、という冗談ではあるが、彼らが日本で開催されるMLBの公式戦で投げ合う姿こそは、日本に住むファンにとってはメジャーリーガーが身近な存在に感じられる数少ない機会である。

 2000年にカブス対メッツの開幕戦が東京ドームで行われて以来、MLBの開幕シリーズ開催は今回で通算6度目だが、今永自身も19年、イチロー氏が引退を決めたマリナーズ対アスレティックス戦を記憶に留めている。

 それは今永が25歳になり、横浜DeNAベイスターズでプロ4年目を迎える年だった。

 イチローの引退試合の数週間後、今永は自身初の「開幕投手」として、横浜での中日戦で8回無失点と好投し、チーム8年ぶりの本拠地開幕戦の勝利を記録している。

 つまり19年は、彼がプロ野球選手として確固たる地位を築き始めた年なのだが、そんな年でさえ、彼は自分がいつの日にかメジャーリーガーになるだなんて思ってはいなかったらしく、そもそもMLBという場所をどこか遠くの世界のように感じていたという。

「あの頃は自分がいつか、アメリカで野球やるなんて思ってなかったし、あの試合もなんかこう、なんで日本でやるのかな? ってぐらいの考え方でした」

 同じ野球をやりながらも、他人事だった日本での開幕戦。イチローの引退以外に覚えていることがある。

「あれは覚えてます。菊池(雄星)さんが2戦目に投げたやつですよね?」

 今年、メジャー7年目を迎えた33歳の菊池雄星は当時まだ27歳だった。マリナーズのチームメイトとして、イチローの引退に号泣していた姿を覚えている人は多いだろう。
 

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