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MLB

なぜ18年MVPのベッツは放出されたのか? 超大型トレードが成立した背景を紐解く

2020.02.05

ベッツは過去4年連続ゴールドグラブを獲得し、シルバースラッガー賞は3回。走攻守を備えたまさに理想のプレーヤーだ。(C)Getty Images

ベッツは過去4年連続ゴールドグラブを獲得し、シルバースラッガー賞は3回。走攻守を備えたまさに理想のプレーヤーだ。(C)Getty Images

 キャンプインを目前にして、3球団が絡む超大型トレードが成立した。

 2月4日(現地)、レッドソックスは2018年にMVPを獲得したムーキー・ベッツ外野手、12年サイ・ヤング賞投手のデビッド・プライス投手をドジャースへトレード。ドジャースは代わりに若手外野手のアレックス・バーデュゴをレッドソックスへ、さらに前田健太をツインズへ放出。前田を得たツインズは若手投手のブルセイダー・グラテロルをレッドソックスへ差し出した。簡単にまとめると以下のような形だ。

→ドジャース
ムーキー・ベッツ
デビッド・プライス

→レッドソックス
アレックス・バーデュゴ
ブルセイダー・グラテロル

→ツインズ
前田健太

 今回のトレードの目玉は何と言ってもベッツだ。走攻守を備えた5ツール・プレーヤーで、現在のMLBではマイク・トラウト(エンジェルス)に次ぐスーパースター。今シーズン終了後にFAになるベッツに対し、レッドソックスは早くから契約延長をもちかけていたが、ベッツはオファーを拒否。FA市場に出て自分の価値を試すことを明言していた。
 
 一方、レッドソックスには膨れ上がった総年俸を減らしたい思惑もあった。総年俸が一定の額を超えたチームに科されるぜいたく税の支払いをレッドソックスが今年回避するためには、約3000万ドル近くを削減する必要があった。今回、ベッツとプライスを放出したことで、その目的は達せられたことになる(注:プライスの年俸は移籍後もレッドソックスが半分支払う)。

 ただ、レイズのような貧乏球団ならともかく、レッドソックスほどのビッグクラブが財政的な理由で生え抜きスーパースターを放出したことには批判も少なくない。すでにSNSではファンの怒りや嘆きの声も多く出ていて、戦力以上のダメージが残りそうだ。

 獲得側のドジャースにとってもリスクがないわけではない。先述したようにベッツは今季終了後にFA。放出したバーデュゴは23歳と若く、将来性も高い。ベッツが1年で退団することになれば、長期的にはバーデュゴを失った損失の方が大きくなる可能性もある。それでも獲得に踏み切ったの理由はやはり、1988年を最後に遠ざかるワールドチャンピオン獲得への強い思いだろう。

 ドジャースは17~18年に2年連続リーグ優勝を果たしたが、ワールドシリーズでは17年にアストロズ、18年はレッドソックスに敗れた。どちらもサイン盗みが問題になった球団が相手だったという不運はさておき、あと一歩で頂点を逃したことを思えば、今回のようなギャンブルに打って出たのも理解できる。

 とにかく、今回のトレードによってドジャースは20年のワールドチャンピオン最有力候補に躍り出たと言っていい。いよいよ2020年のMLBが本格的に動き出した。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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