プロ野球

楽天・涌井秀章の新たなる歩み。異例のキャンプ2日目のブルペン入りで見据える開幕までの日々

田口元義

2020.02.08

涌井はシーズンの開幕へ向けて順調に調整を続けている。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 ピンストライプからクリムゾンレッドのユニフォームへと装いが変わった。だからといって、今年でプロ16年目を迎える涌井秀章の開幕へ向けた準備が変わることはない。

 昨年12月に金銭トレードでロッテから楽天に移籍し、春季キャンプが始まる2月1日時点で、およそ1か月半しか経過していない。囲み取材で記者から「新しいチームには慣れましたか?」と問われ、「いや、まだないです」と煙に巻きながらも「まあ、楽しくやっています」と、新天地での順応も匂わせる。報道陣の受け答えもいつも通り、クールで淡々としている。
 
 そんな涌井が、キャンプ2日目にブルペンでの投げ込みを行った。
 
 ここ数年は序盤にマウンドで投げることはなく、第2クール以降の初ブルペンもあったくらいだそうだ。そう考えれば、この時期での投げ込みは涌井にしては早いほうである。

「昨日(1日)の帰りに、『入ろうかな?』と思ったんで入りました」
 
 1月の館山での自主トレでは、強いボールを投げたと言っても遠投くらいで、傾斜のある場所での投球はしてこなかった。涌井としては「忘れかけていた感覚を、投げていくなかで徐々に取り戻したいから」マウンドに入っただけ。時期に早い、遅いは関係ない。当初のプランでは、キャッチボールの延長程度の力加減で投げていたつもりが、思いのほか自身で納得できる感覚があったため、最終的に捕手を座らせて47球を投げ切った。

 涌井の開幕へ向けての調整を大まかに述べれば、まずはキャッチボールに近いペースで投げ、体をマウンドに慣れさせる。そこから、投球フォームの感覚を徐々に呼び覚まさせ、ボールの強度も上げていく。涌井が特に意識する外角低めなど、コースにもしっかりと投げ切ることができた段階で、打者に対して変化球を投げていき、実戦仕様にコンディションを整えていく――。

 2日の初ブルペンでは、変化球こそ投げなかったが「割とできたほう」と好感触を抱いたため、球数や力のペース配分が、想定よりも上回ったのである。

 涌井の状態の良さは、伊藤智仁投手チーフコーチの見解を聞けば頷ける。

「まだ試運転の段階だし、人によって感覚は違うからね。そこはシーズンに入ってからでいいと思うんだけど、最初のブルペンにしてはボールの回転が良かったし、いいフォームで投げていたよ。若いピッチャーたちにも見習ってほしいくらいだね」