彼はそこまで思慮深く答えると、本当に可笑しそうに笑い、「いや、まあだって、メジャーリーグですもん」と続けた。
「あんな風に打たれてしまうのが、ここがメジャーって言われる由縁であって、そういう高い壁を越えようとすることに意味があるはずだと思う。別にボロボロにやられたとしても人間として駄目なわけじゃないですし、そういう気持ちで臨んでいれば高い壁も乗り越えていけるって感じ。それに野球を辞めたら、こういう気持ちも味わえない。それは寂しいことなんだよってのは感じますよね」
特にメンタル・トレーニングはしてない、と彼は言う。プロ入り後、入れ込み過ぎたこともあれば、自分で自分にプレッシャーかけたこともある。大事な試合を前に「7回無失点でなければいけない」と思ったり、「勝たなきゃ意味がない」と思ったり。そういう失敗を繰り返していくうち、プロ野球選手として生き延びる術を自然と身につけたという。
「いろんなことを考えてしまうんですけど、たとえば地球の総人口、考えてください」
へ? 地球の総人口? 80億人ぐらいだっけ? と一瞬、真面目に考えたが、どうやらそういうことではないらしい。
「僕が先週、ホワイトソックス戦で打たれたとか、地球上のほとんどの人は知らないわけじゃないですか。ヨーロッパに住んでて、ファッションとかにしか興味のない人とか、パリのエッフェル塔にいる警備員の人とか、僕どころか、野球なんて知らないと思うんですよ。ましてや、今永なんて誰も知らないわけです」 彼はニヤリと笑って、「想像してみてください」と畳み掛ける。
「たとえば、アフリカのヤギとか、何も知らないじゃないですか? 僕が打たれたこととか、アフリカのヤギからしたらかすり傷でもないんですよ。何かどっかで、メジャーのピッチャーが打たれたらしいよって、ヤギだからそんなのも考えないわけじゃないですか」
もはや、地球人だけではなく、動物である。
冗談半分だと分かってはいるが、話がハジケすぎだろ、と思っていると、困惑しているこちらを安心させるように、彼は「そういう視点で見ると、なんてこっちゃないって話です」と付け加えた。
「そんな風に想像しちゃうんです。そしたら、別にどうせ『僕のことなんて誰も知らないしな』ってなる。俯瞰とはまた違うけど。もちろん、現実から逃げるのは良くないんで、しっかりと向き合いますけど、24時間365日、反省しなくちゃいけないわけじゃない。そういうことしてると疲れちゃう。だから、そういう時はヤギを思い出して、『俺のことなんて、あいつら知らないぞ』って」
だから、というわけではないだろうが、チームが首位攻防戦に連敗した後のシリーズ最終戦という、とんでもなくプレッシャーがかかる大一番での登板も、彼独特のマインドセットのおかげで、何てことはない日常へと変わる。ブルワーズ戦の登板直後、彼はこう言っている。
「1試合目だろうが100試合目だろうが、首位攻防戦だろうが、自分がやらなければならない仕事は変わらない。結果的に連敗して今日に臨みましたけど、それが3連勝を狙っていたとしても、自分がやるべきことは変わらない」
前述の通り、マウンド上で雄叫びを上げ、熱い心を見せることもあるが、基本的にはとても冷静沈着な人である。たとえば、彼はブルワーズ戦でコントレラスに2打席連続でソロ本塁打を打たれているが、マウンド上では「相手が自分を上回った」と開き直りながら、試合後はすでに、次の対戦を思い描いていたという。
「投げ終わって自分が一番、考えなきゃいけないことは、相手が上回ったじゃなくて、じゃあ次どうすれば彼みたいないい打者を抑えることができるのかってこと。彼(コントレラス)が凄かったで終わらせるのではなく、自分に何が足りないのかを今、考えてます」
「あんな風に打たれてしまうのが、ここがメジャーって言われる由縁であって、そういう高い壁を越えようとすることに意味があるはずだと思う。別にボロボロにやられたとしても人間として駄目なわけじゃないですし、そういう気持ちで臨んでいれば高い壁も乗り越えていけるって感じ。それに野球を辞めたら、こういう気持ちも味わえない。それは寂しいことなんだよってのは感じますよね」
特にメンタル・トレーニングはしてない、と彼は言う。プロ入り後、入れ込み過ぎたこともあれば、自分で自分にプレッシャーかけたこともある。大事な試合を前に「7回無失点でなければいけない」と思ったり、「勝たなきゃ意味がない」と思ったり。そういう失敗を繰り返していくうち、プロ野球選手として生き延びる術を自然と身につけたという。
「いろんなことを考えてしまうんですけど、たとえば地球の総人口、考えてください」
へ? 地球の総人口? 80億人ぐらいだっけ? と一瞬、真面目に考えたが、どうやらそういうことではないらしい。
「僕が先週、ホワイトソックス戦で打たれたとか、地球上のほとんどの人は知らないわけじゃないですか。ヨーロッパに住んでて、ファッションとかにしか興味のない人とか、パリのエッフェル塔にいる警備員の人とか、僕どころか、野球なんて知らないと思うんですよ。ましてや、今永なんて誰も知らないわけです」 彼はニヤリと笑って、「想像してみてください」と畳み掛ける。
「たとえば、アフリカのヤギとか、何も知らないじゃないですか? 僕が打たれたこととか、アフリカのヤギからしたらかすり傷でもないんですよ。何かどっかで、メジャーのピッチャーが打たれたらしいよって、ヤギだからそんなのも考えないわけじゃないですか」
もはや、地球人だけではなく、動物である。
冗談半分だと分かってはいるが、話がハジケすぎだろ、と思っていると、困惑しているこちらを安心させるように、彼は「そういう視点で見ると、なんてこっちゃないって話です」と付け加えた。
「そんな風に想像しちゃうんです。そしたら、別にどうせ『僕のことなんて誰も知らないしな』ってなる。俯瞰とはまた違うけど。もちろん、現実から逃げるのは良くないんで、しっかりと向き合いますけど、24時間365日、反省しなくちゃいけないわけじゃない。そういうことしてると疲れちゃう。だから、そういう時はヤギを思い出して、『俺のことなんて、あいつら知らないぞ』って」
だから、というわけではないだろうが、チームが首位攻防戦に連敗した後のシリーズ最終戦という、とんでもなくプレッシャーがかかる大一番での登板も、彼独特のマインドセットのおかげで、何てことはない日常へと変わる。ブルワーズ戦の登板直後、彼はこう言っている。
「1試合目だろうが100試合目だろうが、首位攻防戦だろうが、自分がやらなければならない仕事は変わらない。結果的に連敗して今日に臨みましたけど、それが3連勝を狙っていたとしても、自分がやるべきことは変わらない」
前述の通り、マウンド上で雄叫びを上げ、熱い心を見せることもあるが、基本的にはとても冷静沈着な人である。たとえば、彼はブルワーズ戦でコントレラスに2打席連続でソロ本塁打を打たれているが、マウンド上では「相手が自分を上回った」と開き直りながら、試合後はすでに、次の対戦を思い描いていたという。
「投げ終わって自分が一番、考えなきゃいけないことは、相手が上回ったじゃなくて、じゃあ次どうすれば彼みたいないい打者を抑えることができるのかってこと。彼(コントレラス)が凄かったで終わらせるのではなく、自分に何が足りないのかを今、考えてます」
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