逆に、ドラフト直後に評価が高くても最終的に成功とは言いづらい指名も存在している。そのケースとして以下の3例を挙げたい。
▼2018年中日 採点:95点
主な指名選手:根尾昂(1位)、梅津晃大(2位)、勝野昌慶(3位)
▼2019年ヤクルト 採点:90点
主な指名選手:奥川恭伸(1位)、吉田大喜(2位)、杉山晃基(3位)
▼2021年DeNA 採点:90点
主な指名選手:小園健太(1位)、徳山壮磨(2位)、粟飯原龍之介(3位)
18年の中日を高く評価したのはやはり、4球団が競合した根尾を1位で引き当てたことだ。当時のチームには京田陽太(現DeNA)がショートのレギュラーとして活躍していたが、根尾とは6歳差であり、また根尾は外野など他のポジションでもプレーしていることを考えると共存可能なように見えた。また2位の梅津、3位の勝野もスケールの大きい投手として将来性の高さが際立っていたことも高く評価した要因だ。
しかし、根尾はショートとしてスタートしたもののなかなかポジションが定まらず、投手転向後も結果を残すことはできていない。梅津もたび重なる故障に苦しみ、下位指名まで見ても戦力となっているのは中継ぎとして一軍に定着した勝野くらいである。根尾をどう育てるかというビジョンの欠如が失敗の大きな要因だった印象だ。
19年のヤクルトも3球団が競合した奥川を引き当てると、2位と3位でも大学生で前評判の高かった吉田と杉山を獲得。長年、投手不足に苦しんでいたチーム事情もあり、将来性と即戦力の両面で良い補強と感じる指名だった。
だが、奥川は2年目に9勝をマークしたものの、その後は怪我もあって低迷。吉田は通算3勝、杉山は通算0勝ですでにチームを去っている。ここまで3人が揃って戦力にならないと予想した人は少なかったのではないだろうか。4位で指名した大西広樹が中継ぎで戦力となり、5位の長岡秀樹もショートのレギュラーとなったため完全な失敗とは言えないものの、思い描いていた結果とは程遠い印象は否めない。
21年のDeNAは高校No.1投手の呼び声が高かった小園を2球団競合で引き当てたことが高く評価した最大の要因だ。小園は高校生でありながら完成度が高く、早くから一軍でも戦力になる可能性が高いように見えた。DeNAとしても太い柱となるエース候補は必要であり、チーム事情にもマッチしていた指名だったことは確かだろう。しかし、1年目に身体作りを重視したことからピッチングの感覚が戻らず、いまだに一軍定着を果たせずにいる。2位の徳山、3位の粟飯原も結果を残せず、今季終了後に戦力外となった。
こうしてみると、期待された1位指名の高校生選手が思うように成長できなかったケースが目立ち、改めて高校生の1位指名はリスクが伴うものだという印象を強くする。ただ、17年のヤクルトが村上一人によって成功となったように、驚異的な成長を見せるのもまた高校生であることが多い。そのあたりをどう見極めて指名するかが、スカウトの腕の見せ所であることは間違いないだろう。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
【記事】【アマチュア野球ウォッチャーやまけんのドラフト採点】阪神、ロッテは納得の高評価。高校生を大量指名したオリックスは...<SLUGGER>
【記事】【有識者ARAのドラフト採点】立石を当てた阪神、石垣の交渉権を得たロッテはいずれも高評価。だが、最高得点は意外にも……<SLUGGER>
【記事】【2025ドラフト候補ランキング最終版│1~10位】創価大・立石、健大高崎・石垣、青山学院大・中西の“BIG3”に続くのは一体誰だ!?<SLUGGER>
▼2018年中日 採点:95点
主な指名選手:根尾昂(1位)、梅津晃大(2位)、勝野昌慶(3位)
▼2019年ヤクルト 採点:90点
主な指名選手:奥川恭伸(1位)、吉田大喜(2位)、杉山晃基(3位)
▼2021年DeNA 採点:90点
主な指名選手:小園健太(1位)、徳山壮磨(2位)、粟飯原龍之介(3位)
18年の中日を高く評価したのはやはり、4球団が競合した根尾を1位で引き当てたことだ。当時のチームには京田陽太(現DeNA)がショートのレギュラーとして活躍していたが、根尾とは6歳差であり、また根尾は外野など他のポジションでもプレーしていることを考えると共存可能なように見えた。また2位の梅津、3位の勝野もスケールの大きい投手として将来性の高さが際立っていたことも高く評価した要因だ。
しかし、根尾はショートとしてスタートしたもののなかなかポジションが定まらず、投手転向後も結果を残すことはできていない。梅津もたび重なる故障に苦しみ、下位指名まで見ても戦力となっているのは中継ぎとして一軍に定着した勝野くらいである。根尾をどう育てるかというビジョンの欠如が失敗の大きな要因だった印象だ。
19年のヤクルトも3球団が競合した奥川を引き当てると、2位と3位でも大学生で前評判の高かった吉田と杉山を獲得。長年、投手不足に苦しんでいたチーム事情もあり、将来性と即戦力の両面で良い補強と感じる指名だった。
だが、奥川は2年目に9勝をマークしたものの、その後は怪我もあって低迷。吉田は通算3勝、杉山は通算0勝ですでにチームを去っている。ここまで3人が揃って戦力にならないと予想した人は少なかったのではないだろうか。4位で指名した大西広樹が中継ぎで戦力となり、5位の長岡秀樹もショートのレギュラーとなったため完全な失敗とは言えないものの、思い描いていた結果とは程遠い印象は否めない。
21年のDeNAは高校No.1投手の呼び声が高かった小園を2球団競合で引き当てたことが高く評価した最大の要因だ。小園は高校生でありながら完成度が高く、早くから一軍でも戦力になる可能性が高いように見えた。DeNAとしても太い柱となるエース候補は必要であり、チーム事情にもマッチしていた指名だったことは確かだろう。しかし、1年目に身体作りを重視したことからピッチングの感覚が戻らず、いまだに一軍定着を果たせずにいる。2位の徳山、3位の粟飯原も結果を残せず、今季終了後に戦力外となった。
こうしてみると、期待された1位指名の高校生選手が思うように成長できなかったケースが目立ち、改めて高校生の1位指名はリスクが伴うものだという印象を強くする。ただ、17年のヤクルトが村上一人によって成功となったように、驚異的な成長を見せるのもまた高校生であることが多い。そのあたりをどう見極めて指名するかが、スカウトの腕の見せ所であることは間違いないだろう。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
【記事】【アマチュア野球ウォッチャーやまけんのドラフト採点】阪神、ロッテは納得の高評価。高校生を大量指名したオリックスは...<SLUGGER>
【記事】【有識者ARAのドラフト採点】立石を当てた阪神、石垣の交渉権を得たロッテはいずれも高評価。だが、最高得点は意外にも……<SLUGGER>
【記事】【2025ドラフト候補ランキング最終版│1~10位】創価大・立石、健大高崎・石垣、青山学院大・中西の“BIG3”に続くのは一体誰だ!?<SLUGGER>
関連記事
- 【西武】高橋光成のポスティングによるメジャー挑戦を容認へ「強い意思を尊重」 本人は「昔から夢だった」「決断が間違っていなかったと思えるように」と活躍誓う
- 「非常に見応えがあった」落合博満氏が日本シリーズを総括! ソフトバンクが阪神に4勝1敗、勝負の“分岐点”を指摘「結果論になっちゃうけど、順番がどうなのかな」
- 【有識者ARAのドラフト採点】立石を当てた阪神、石垣の交渉権を得たロッテはいずれも高評価。だが、最高得点は意外にも……<SLUGGER>
- 【アマチュア野球ウォッチャーやまけんのドラフト採点】阪神、ロッテは納得の高評価。高校生を大量指名したオリックスは...<SLUGGER>
- 「なんで指名されてないんや」東京六大学野球の三冠王に吉報は届かず…「予想外だな」「意味わからん過ぎ」などの声【NPBドラフト会議】




