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プロ野球

野球界の現状に危機感を覚える宮本慎也氏が、琉球オーシャンズに伝えた「正しい努力」

岩国誠

2020.02.21

 そんな中で引き受けた今回の臨時コーチ。ゼロからスタートした新球団をどう見たのか。

「あんまり施設や設備がないのは、不利ではありますが関係ないと思います。逆にいろんな知恵や練習方法が身につくチャンス。NPBだってソフトバンクとヤクルトでえらい違いますし。正直、無理なんじゃないかっていう厳しい意見は僕の耳にも届いていますが、球団関係者だけでなく沖縄県民の方々と力を合わせるような形になって、(エクスパンション時のNPB参入を)目指してほしいなと思います」

 新球団の可能性に期待を寄せる中、新たな挑戦を続ける選手たちへの指導から何を感じたのか。

「プロ出身じゃない選手たちは、知らないことがたくさんあるだろうなと。その中で、彼らは必死に吸収しようとしている。そういう部分で僕も楽しさを感じました。プロ球団ではありますが、NPBとは当然レベルに大きな差があります。できないことが多い中で、このやり方でやってみようとか、できなければこっちのやり方で伝えてみようとか。いろいろ試す中で、選手たちが指導したことを理解し、できた時に教える側が感じる喜びが楽しさになるのかなと」 

 ヤクルトヘッドコーチ時は、各担当コーチに技術指導を任せていたということもあり、自身が直接技術指導することが少なかったという。プロとしての技術と知識がまた備わっていない若い才能たちと接することで、宮本氏は指導者としてのスキルアップできる可能性を感じていた。それと同時に、球団が目指すべきNPBレベルへ育てていくために、意識しなければいけないポイントがあると、こう指摘する。

「小中学生の指導経験で感じたことですが、ずっとそのレベルを見ていると、指導内容のレベルが逆に上がっていかなかったりするんですね。『次の段階に行ける』っていうのが止まってしまう。だから指導者側もプロ野球をちゃんと見て、そこのレベルに持っていくというところは、確認しながらやらないといけないとは思います」
 
 選手たちへの注文も忘れていなかった。

「みんな一生懸命やると思いますが、僕の言ったことやいろんな人の話を聞いて、それを理解して続けることが一番大事になってきます。本当に理解できているかは1日や2日だけではわからない。言われたからただ単にやっているだけでは、それこそ野村(克也)さんが言っている『間違った努力』になるので、正しい努力が続けられるように頑張ってほしいですね」

 宮本氏は2日間の特別講義を終え、「次会うときには上手くなっとけよ!」と選手たちにエールを送って球場を後にした。

取材・文●岩国誠(フリーライター)

【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年生まれ。プロ野球のニュース番組制作に携わるTV映像ディレクター。一時は球団公式SNS用動画制作やパ・リーグTVでの制作・配信を担当。その縁からフリーライターとして、webメディアでのプロ野球記事の執筆を始める。また、舞台俳優としての経験を生かして、野球イベントなどの運営や進行役など、幅広い活動を行っている。
 

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