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MLB

前例が少ない日本人内野手の“メジャー挑戦”――村上宗隆、岡本和真の渡米1年目の「合格ライン」を考える<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.12.19

 12年の川﨑は尊敬するイチローを追ってマイナー契約でマリナーズと契約。オープン戦で結果を残して開幕メジャーを勝ち取った。その年のオフにブルージェイズとマイナー契約を交わして再びメジャー昇格を果たすと、サヨナラ打を放った直後のヒーローインタビューで人気が爆上がり。MLBネットワークの名物番組に出演するほどのカルトヒーローとなった。

 一方の中島はメジャー契約でアスレティックス入りするも、オープン戦で故障するなどして結果が残せず。開幕をマイナーで迎えると、そのまま2年間で一度もメジャー昇格へすることなく、日本球界に復帰している。

 日本人選手が少なかった頃は「メジャー挑戦」、成功例が増えた昨今は「メジャー移籍」と表現してもいいと思うが、もちろん、全員が「成功」したわけではない。その後の野球人生にはプラスになっているはずなので、「失敗」とは表現したくないが、「活躍できなかった選手は多く、村上や岡本の行く末も気になる。

 村上と岡本が三塁をやるのか、一塁を守るのか、あるいは指名打者になるのかは現時点では不明だが、ここではよく言われているような、人工芝の多い日本のプロ野球から天然芝の多いMLBへの適応や、総体的に高い打球速度への対応ということではなく、守備を度外視した打撃成績について考えたい。

 昨季、打撃の主要3部門とOPS(出塁率+長打率)で、規定打席に到達してMLB最高成績を残した三塁手は以下の3人だ(太字が新人最高)。
 
アレック・ボーム(フィリーズ)
打率.287★ 11本塁打 59打点 OPS.740

エウヘニオ・スアレス(ダイヤモンドバックス/マリナーズ)
打率.228 49本塁打★ 118打点★ OPS.824

ホゼ・ラミレス(ガーディアンズ)
打率.283 30本塁打 85打点 OPS.863

 3人ともタイトルこそ獲れなかったが、ナ・リーグMVPのドジャースの大谷翔平選手が打率.282、55本塁打、102打点、OPS1.014だったことを考えれば、彼らの成績が(大谷の驚異的なOPSは別にして)いかに突出していたのかが分かる。一塁手では今オフ、メッツからFAになってオリオールズと契約したピート・アロンゾが、38本塁打、126打点。OPSではア・リーグ新人王のニック・カーツ(アスレティックス)が1.002と飛び抜けた成績を残しており、DHでもカイル・シュワバー(フィリーズ)が56本塁打、132打点。OPSでは大谷が1.014と他の追随を許さない数字を残しており、1年目の村上や岡本にいきなりそのレベルを求めるのはフェアじゃない。むしろ参考になるのは昨季、活躍した新人選手たちである。

ケイレブ・ダービン(ブルワーズ)
打率.256 11本塁打 53打点 OPS.721 

マット・ショウ(カブス)
打率.226 13本塁打 44打点 OPS.689

 MLB関係のメディアでは、日本プロ野球で活躍したスター選手をFAと表現することが多く、新人と比較することに異論を持つ人もいるだろう。しかし、1年目に限ってはダービンらの成績を参考に、その成否を考えた判断した方が良いのではないかと思う。
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