100試合以上に出場した新人一塁手の中では、打率.290、36本塁打、86打点で新人王を獲得した前出のカーツを別にすれば、コディ・メイヨ(オリオールズ)の11本塁打、OPS.687、エリック・ワガマン(マーリンズ)の53打点が最高だった。指名打者は同ポジションで出場した試合数が少ないので比較し難いのだが、本来は捕手のアグスティン・ラミレス(マーリンズ)が出場63試合で14本塁打(捕手としては73試合で7本塁打)、38打点(同28打点)、OPS.780(同.627)が「好成績」と呼べるレベルにある。
つまり、とても乱暴な表現をすれば、村上や岡本が来季=MLB移籍初年度で打率.256、13本塁打、53打点、そしてOPS.721ぐらいであれば、それはもう充分「成功」と呼べるのではないか。加えて列挙しておきたいのは、過去にMLBに移籍した2人の日本人選手の1年目の成績だ。
岩村明憲(07年)
打率.285 7本塁打 34打点 OPS.770
鈴木誠也(22年)
打率.262 14本塁打 46打点 OPS.770
村上にとって「ヤクルトの先輩」にあたる岩村は2年目の08年に二塁手に定着してレイズの初優勝に貢献しているが、MLB移籍当初は村上と同じ三塁手だった。一方、岡本と同じ「右打者」の鈴木誠也はこの成績を「出発点」として、4年目の昨季、32本塁打&103打点という、日本人右打者のシーズン最高成績を更新し、「大谷以外」の日本人メジャーリーガーで近年最も成功した野手となった。 そう考えるとやはり、村上も岡本も打率.250前後で10本以上の本塁打を放ち、50前後の打点を稼いで、OPSが.750以上あれば、「1年目」の成績としては充分。すべての部門じゃなくとも、鈴木のように2年目以降に成績が向上すれば「成功」と言えるのではないか。
忘れてはならないのは、今ではMVPを獲得するのが当たり前のようになっている大谷だって、1年目のオープン戦では苦戦したことだ。短期間で適応してしまったので、強調されることはないが、その後も怪我と格闘したり、競争力のないチームでプレーする辛酸を味わいながら「今」がある。彼を「別格」と定めるなら、歴代最高の「日本人右打者」となった鈴木がそれに見合う成績を残しながら、今も自身が望む理想と闘い続けている方が、村上や岡本にとってはリアルな「見本」となると思う。
村上と岡本が挑むのは、前例が極端に少ない日本人内野手としてのメジャー移籍である。簡単にはいかないだろう、という予想は仕方ないし、それゆえに「メジャー挑戦」という古の常套句を使いたくなるぐらいだ。今はただ彼らに最適解の移籍先が見つかり、長い目で見守っていけるような環境が整うことを願うばかりである――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
【記事】すべては2026年次第――複雑怪奇なQOのシステムから考える「今永昇太が1年契約でカブスに残留した理由」<SLUGGER>
【記事】「正直、ずっと苦しかった」「いい形で終われたのは自信になった」今永昇太と鈴木誠也、ポストシーズンまで戦い抜いた者だからこその“総括”<SLUGGER>
つまり、とても乱暴な表現をすれば、村上や岡本が来季=MLB移籍初年度で打率.256、13本塁打、53打点、そしてOPS.721ぐらいであれば、それはもう充分「成功」と呼べるのではないか。加えて列挙しておきたいのは、過去にMLBに移籍した2人の日本人選手の1年目の成績だ。
岩村明憲(07年)
打率.285 7本塁打 34打点 OPS.770
鈴木誠也(22年)
打率.262 14本塁打 46打点 OPS.770
村上にとって「ヤクルトの先輩」にあたる岩村は2年目の08年に二塁手に定着してレイズの初優勝に貢献しているが、MLB移籍当初は村上と同じ三塁手だった。一方、岡本と同じ「右打者」の鈴木誠也はこの成績を「出発点」として、4年目の昨季、32本塁打&103打点という、日本人右打者のシーズン最高成績を更新し、「大谷以外」の日本人メジャーリーガーで近年最も成功した野手となった。 そう考えるとやはり、村上も岡本も打率.250前後で10本以上の本塁打を放ち、50前後の打点を稼いで、OPSが.750以上あれば、「1年目」の成績としては充分。すべての部門じゃなくとも、鈴木のように2年目以降に成績が向上すれば「成功」と言えるのではないか。
忘れてはならないのは、今ではMVPを獲得するのが当たり前のようになっている大谷だって、1年目のオープン戦では苦戦したことだ。短期間で適応してしまったので、強調されることはないが、その後も怪我と格闘したり、競争力のないチームでプレーする辛酸を味わいながら「今」がある。彼を「別格」と定めるなら、歴代最高の「日本人右打者」となった鈴木がそれに見合う成績を残しながら、今も自身が望む理想と闘い続けている方が、村上や岡本にとってはリアルな「見本」となると思う。
村上と岡本が挑むのは、前例が極端に少ない日本人内野手としてのメジャー移籍である。簡単にはいかないだろう、という予想は仕方ないし、それゆえに「メジャー挑戦」という古の常套句を使いたくなるぐらいだ。今はただ彼らに最適解の移籍先が見つかり、長い目で見守っていけるような環境が整うことを願うばかりである――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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