そして、「こっちでは鈍感になることも必要かも」と笑った。野球に集中するべく単身で過ごす筒香は、フロリダではプール付きの豪邸で暮らしている。しかし、ベッドではダニに噛まれ、トイレがあふれて水浸しになるトラブルもあったという。汚物が混じっていなかったので事なきを得たそうだが、「引っ越そうかと思いました（笑）」。それでも生活は楽しんでいる様子だった。

　新チームでも中軸打者の役割を期待されるが、相手投手やチームメイトの相性、調子によって、打順は２番から７番、守備も一塁、三塁、左翼、ＤＨとさまざまな起用が予想される。打順に関しては問題ないように思うが、本人も「サードは大丈夫じゃないです。けっこうあやしいと思います」と苦笑い。極端なシフトだけでなく、相手打者によってのポジショニングは日本時代よりも細かいという。

　やるべきことは多々あるが、それも楽しんでいるように生き生きしていた。
  「優勝を目指すし、それができる強いチームです。試合の中では状況に応じて、チームの勝利につながるバッティングがしたい」と話す筒香に、一人の選手としてのあり方、メジャーリーガーとして描く将来像を訊ねると、「やっぱり長距離ヒッター、スラッガーという気持ちはあります。追い込まれるまでは、自分のスウィング、強いスウィングを心がけたい」と力強く答えてくれた。

　筒香が目指す選手像は私たちが期待する姿と同じだろう。

　オープン戦で左中間に放った逆方向へ一発のように、豪快なホームランでアメリカのファンを沸かせてほしい。そしてなにより、筒香の笑顔が毎日見られるように期待したい。

取材・文●節丸裕一

【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。MLB実況歴18年目。キャンプからオールスター、ワールドシリーズ、さらに日米野球やWBCまで実況＆取材を多数こなす。