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プロ野球

【世代別で見るプロ野球】「松坂世代」と「田中・斎藤世代」の間に埋もれながら、タイトルホルダーを多く輩出した密かな豊作世代

氏原英明

2020.03.27

 実は当初、彼らは豊作世代とは位置付けられていなかった。平田良介(中日)、炭谷銀仁朗(巨人)ら実力者が多かった1学年上の世代と比べると小粒と見られる向きが多かったのだ。しかし、06年夏の甲子園が盛り上がりを見せると一気に注目を浴びるようになった。

「松坂世代」と「田中・斎藤世代」の間に挟まれながらも勢力を伸ばした「谷間世代」もある。84年度生まれ、今年で36歳になる世代だ。

 実は、この世代はタイトルホルダーを9人も輩出するなど隠れた豊作世代である。また、13年のWBCでは「田中・斎藤」世代と並んで最多となる4人の代表メンバー(長野久義、牧田和久、本多雄一、大隣憲司)を輩出している。

 彼らが「谷間」と呼ばれるのは、高校3年時のドラフトが松坂世代の大卒組と、大卒組が「田中・斎藤」世代の高卒組と重なったことで、スポットライトが当たらなかったためだ。しかし、ファンに強烈な印象を残した2つの世代の板挟みに合いながら、彼らは存在感を示してきたのである。
 
 そのメンバーは多士済々だ。

 西岡剛はロッテ時代の05年にパ・リーグ史上最年少で盗塁王に輝いた。吉見一起と浅尾拓也は中日で一時代を築き、吉見は最多勝2回に最優秀防御率1回、浅尾は11年に中継ぎ投手ながらMVPを受賞した。

 坂口智隆(現ヤクルト)はオリックス時代の11年に最多安打のタイトルを獲得、長谷川勇也(ソフトバンク)は13年に首位打者と最多安打を記録するなど、ともにヒットメーカーとしてパ・リーグに君臨した。西武のエースとして日本一も経験した岸孝之は楽天移籍後に防御率のタイトルを獲得し、増井浩俊(現オリックス)は日本ハム時代に最優秀中継ぎ投手に選ばれている。

 タイトルホルダー以外でも、前述の13年WBC代表4人や、育成枠からの新人王に輝いた松本哲也(元巨人)や投手から野手に転向して成功した雄平(ヤクルト)、3球団を渡り歩いた大引啓次(元ヤクルト)、ゴールデン・グラブ賞2度受賞の岡田幸文(元ロッテ)、楽天で正捕手として日本一に貢献した嶋基宏(現ヤクルト)などがいる。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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