もちろん、技術的な部分にもアプローチする。守備への意識が向上すれば飲み込みも早くなる。いわば、選手側の受け入れ態勢に刺激を与えるのが清水のやり方だ。
「外野守備で苦労するのは多くがスローイングです。選手はいい球を投げようと思うと、10割の力を入れようとする。でも10割の力で投げようとすると身体が開いてしまって、ボールに力が伝わらないからいい球がいかない。10割で投げたのと、5割の力で投げたのとで、なぜ5割の力で投げた方がいい球が行くんだ? と選手には問いかけています」。
力みについては、清水が最も声を大にする要素だ。外野手は捕球するまでよりも、その後の時間が意外に長い。そのため余計なところに気持ちが向いてしまう。投げる瞬間に力む選手もいれば、早く返球することばかりに気を取られて、バランスを崩した投げ方になってしまうタイプもいるが、とにかく「スローイングは力みを取ることですよ。いいバランスで投げないといけないわけですから」と清水は言う。
清水の教えによって、11~12年に外野手リーグ最多補殺を記録するまでになった中田は「清水さんのおかげ」と感謝を口にする。ロッテ時代に教えを受けてブレイクを果たした荻野貴司や清田育宏も、清水を慕う。それは何も、コーチとしての手腕の高さだけが理由ではない。
昨季のCSファーストステージ第1戦。阪神は6点のビハインドを7、8回でひっくり返し、奇跡的な逆転勝利を演じた。この試合後、目を潤ませながら引き上げていく清水の表情が印象的だった。
「北條(史也)がホームランを打ってくれたことで、まだいけるぞっていう感じになった。あいつは試合が終わっても必ず練習をする選手なんですよ。試合に出れなかった時もちゃんと試合後には打ってきた選手だから、ああいう奴が結果を出してくれると、すごい嬉しい。若いやつ、原口(文仁)とかもそうだけど、陰で努力をしている選手が結果を出してくれて、感動した」。
常に、選手の努力を見逃さない清水のコーチとしての愛情が見てとれる。だからこそ教え子たちも、彼の言葉に真摯に耳を傾けるのだろう。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
【阪神PHOTO】無観客でもなんのその!元気にプレーする選手たち
「外野守備で苦労するのは多くがスローイングです。選手はいい球を投げようと思うと、10割の力を入れようとする。でも10割の力で投げようとすると身体が開いてしまって、ボールに力が伝わらないからいい球がいかない。10割で投げたのと、5割の力で投げたのとで、なぜ5割の力で投げた方がいい球が行くんだ? と選手には問いかけています」。
力みについては、清水が最も声を大にする要素だ。外野手は捕球するまでよりも、その後の時間が意外に長い。そのため余計なところに気持ちが向いてしまう。投げる瞬間に力む選手もいれば、早く返球することばかりに気を取られて、バランスを崩した投げ方になってしまうタイプもいるが、とにかく「スローイングは力みを取ることですよ。いいバランスで投げないといけないわけですから」と清水は言う。
清水の教えによって、11~12年に外野手リーグ最多補殺を記録するまでになった中田は「清水さんのおかげ」と感謝を口にする。ロッテ時代に教えを受けてブレイクを果たした荻野貴司や清田育宏も、清水を慕う。それは何も、コーチとしての手腕の高さだけが理由ではない。
昨季のCSファーストステージ第1戦。阪神は6点のビハインドを7、8回でひっくり返し、奇跡的な逆転勝利を演じた。この試合後、目を潤ませながら引き上げていく清水の表情が印象的だった。
「北條(史也)がホームランを打ってくれたことで、まだいけるぞっていう感じになった。あいつは試合が終わっても必ず練習をする選手なんですよ。試合に出れなかった時もちゃんと試合後には打ってきた選手だから、ああいう奴が結果を出してくれると、すごい嬉しい。若いやつ、原口(文仁)とかもそうだけど、陰で努力をしている選手が結果を出してくれて、感動した」。
常に、選手の努力を見逃さない清水のコーチとしての愛情が見てとれる。だからこそ教え子たちも、彼の言葉に真摯に耳を傾けるのだろう。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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