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プロ野球

「FA登録日数」と「出来高」はどうなる?コロナ禍で浮き彫りになったプロ野球の“構造的問題“

中島大輔

2020.06.08

労使に関して揉めに揉めているメジャーリーグは1994年以来のストライキも噂される。しかし、この争いはある意味、“正常”とも言える。(C)Getty Images

労使に関して揉めに揉めているメジャーリーグは1994年以来のストライキも噂される。しかし、この争いはある意味、“正常”とも言える。(C)Getty Images

 開幕までに選手会が明確にしたいことは、大きく2点ある。出来高契約と、FA制度に関する出場登録日数の扱いだ。ともに143試合を前提して作られており、120試合に減って影響が出るものについて見直しを求めているというわけだ。

 まずは出来高について、森事務局長の説明だ。
「率で計算するものは試合数が減っても影響はないでしょうけど、(安打数や勝利数など)積み重ねていくものは試合数が減ればチャンスも減るわけです。年俸を統一契約書で契約して、頑張ればもらえるものが出来高です。出来高契約を結んでも、最初から達成できないと思っていたら、モチベーションが上がらないじゃないですか。選手のモチベーションが上がらないということは、チームの成績にも影響する可能性があります」

 6月1日の事務折衝で選手会がそう要求すると、NPBの答えは「ある程度、球団に任せる」というものだった。実際には「見直す」という球団があれば、そうでないところもあるという。この点に、NPBという組織の構造的な問題がある。森事務局長が続ける。

「もともと、選手は球団を選んで入っているわけではありません。裁量的なところは球団によって違っていたとしても、出来高契約の基準を見直すか、見直さないかという(契約の根本的な)部分では統一してもらわなければと思っています」

 ドラフト会議の際、選手は球団を選択する権利がない。年俸の査定項目などは各球団によって異なるのは当然だが、試合数減による出来高の扱いを見直すか否かという、契約の根本的な部分は12球団全体で統一してほしい、というのが選手会の要望だ。
 
 この点に関し、NPBの構造的限界が浮き彫りになる。NPBの位置づけは、あくまでリーグを運営する上での「調整機関」にすぎない。選手やチーム関係者へのPCR検査に関しても各球団に判断を委ねているように、良くも悪くもそれぞれの球団の意見が尊重され、NPBがリーダーシップをとってプロ野球全体の統一見解を提示できないことが多々ある。

 今季は120試合制になることで、「FAに関する出場登録日数」にも大きな影響が及ぶ。例年は約190~200日の間に143試合が行われ、割合とすれば期間中の4分の3程度を一軍で過ごせば「1シーズン」とカウントされる計算だ。

 しかし今季は、約140日(雨天中止などによる延期は除く)しか期間がなく、CSに出場したチームで全期間登録された選手など数少ないケースを除き、ほぼすべての選手が「1シーズン」を満たすことができない。ゆえに選手会は、例年と割合的に同じ日数(1日登録当たり約1.35日登録に換算)に一軍登録されれば「1シーズン」と数えられるように求めているが、機構側は通常通りに「実数」とし、合意に至っていないのが現状だ。

 選手会の要求について、森事務局長はこう話した。
「例年は200日の登録日数があったとしても、145日を超える日数はカットされてカウントされています。今回は特別な事情があったにせよ、『試合数と登録可能日数が減ったので、(FAにも影響する)出場登録日数も実数で』というのはおかしい。割合として例年と同じような登録日数にしてほしいと主張しています」

 そしてこの選手会の要求に対し、選手関係委員会の谷本修委員長(阪神球団本部長)はこう語った。
「(日数が)足りない部分だけ救ってというのは分からないでもない。ただ、全選手というのは違うのではないか」(6月1日の『朝日新聞DIGITAL』より)
 
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