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プロ野球

「FA登録日数」と「出来高」はどうなる?コロナ禍で浮き彫りになったプロ野球の“構造的問題“

中島大輔

2020.06.08

歴代最高の二塁手とも言われる山田哲人は、順調なら今オフにFA権を取得するが、彼をもってもその情勢は不確定である。写真:徳原隆元

歴代最高の二塁手とも言われる山田哲人は、順調なら今オフにFA権を取得するが、彼をもってもその情勢は不確定である。写真:徳原隆元

 両者による見解の差は、そもそもFAの位置づけが異なるからだと考えられる。ドラフトで球団選択の自由がない選手にとって、所属先を自身の意思で選べるFAは「不可欠な権利」だ。対して球団は、長らく貢献した選手への「ご褒美」のように捉えている。実際、FA制度の導入が検討された頃、球団側は「活躍した人たちに対する優遇策」と設計した経緯がある。「全選手というのは違うのではないか」という発言の裏には、こうした思想の差があるのだ。

 森事務局長によると、登録日数を実数とカウントする理由について機構側から明確な説明はないとのことだが、邪推すれば、選手FAの権利を与えるのを1年でも遅くしたいのではないだろうか。

 もちろん、誰より開幕を待ちわびているのは選手たち自身だ。しかし同時に、個人事業主であるプロとしてプレーする以上、事前に球団と話し合って契約事項を明瞭にし、納得しておくのは不可欠である。1993年に導入されたFA制度のように、選手会が条件面で妥協して受け入れた結果、不利を強いられてきたケースが過去から現在まで、あまりにも多くある。
 
「今回、選手会が主張している出場登録日数と出来高払いの見直しは、コロナの影響で球団の収益が減るのとは全然関係ないことです。そこは引けないところです」

 森事務局長はそう話したが、本来、選手会と機構側はもっと前から徹底的に話し合うべきだった。選手会の呼びかけで6月1日に事務折衝が行われた際、次回の予定は組まれていなかったという。そこで選手会が15日に開催する臨時大会の報告も兼ね、翌日16日に再び話し合うことになった。双方にこれだけの乖離がある中、果たして開幕3日前に合意はなされるのだろうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大という不測の事態により、NPBの組織としての限界が改めて明らかになった。中長期的に見れば、そのあり方を見直すことが不可欠だ。短期的には、選手たちはペナントレースで最高のプレーを見せるためにも、機構側と徹底的に話し合い、納得する形で開幕を迎えてほしい。
 
取材・文●中島大輔

【著者プロフィール】 
なかじま・だいすけ/1979年生まれ。2005年から4年間、サッカーの中村俊輔を英国で密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』。『中南米野球はなぜ強いか』で2017年度ミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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