二軍ならほぼ全試合で優先起用され、トレーニングに充てる時間も十分に確保される。一軍で出場機会を与えるのはいいが、「救世主」「白羽の矢」と言った見出しが紙面に踊る中、はやる気持ちに肉体が追いつかず、怪我をするリスクも脳裏をよぎってしまう。

　また、ＣＳなし、120試合制の今季、育成目的の出場機会を確保し続けられる余裕がチームにあるかという点も疑問だ。性急に石川昂を昇格させずとも、まず代打で結果を出している石垣雅海を起用する選択肢もあったのではないか。チーム、そして石川昂本人にとって、今回の決断がベストな選択であったと明快に言い切ることもまた難しい。
  　ただ、怪我のリスクや戦略的な懸念があるとはいえ、石川昂が今後、活躍することで今回の昇格を自らベストな選択に変えてしまう可能性も十分ある。そもそも、スーパースターになるような逸材は、周囲の不安や想像を遥かに超えて勝手に育っていくもの。

　今回はおそらく１ヵ月程度の一軍帯同と思われるが、体調に十分留意しつつ伸び伸びプレーさせれば、さほど問題はないのかもしれない。今後もデビュー戦で見せたスラッガーらしいパワフルなスイングが見られることを、心から期待したい。

文●ロバートさん (@robertsan_CD)

【著者プロフィール】
1988年生まれ。Twitterにて中日ドラゴンズの戦力分析・考察を行う中日ファン。中日新聞プラスにて「データで考える中日ドラゴンズ」を連載中。

【中日PHOTO】今季初実戦となる紅白戦を実施！ ドラフト４位ルーキーの郡司や３年目の山本がアピール！