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MLB

ニューヨーク最大級のスターだった“ダークナイト”マット・ハービーの栄光と凋落

杉浦大介

2020.07.30

 この年、プレーオフ出場が確実になった時期に、代理人のスコット・ボラスが「手術明けのハービーにイニング制限を課すべき」と提言し、ニューヨークが大騒ぎになったこともある。ロイヤルズとのワールドシリーズ第5戦では、9回途中まで1失点と好投したハービーをテリー・コリンズ監督が交代させ、直後に同点に追いつかれて結果的に試合に敗れたことが論議を呼んだ。一挙一動が話題になるという意味で、ハービーはアレックス・ロドリゲスと並ぶ風雲児だった。

 しかし16年以降、ハービーは急速にその輝きを失っていく。この年は4勝10敗、防御率4.86と低迷。7月には右肩を手術してシーズン終了となった。17年は5勝7敗、防御率6.70とさらに調子を落とし、同時にこの頃にはハービーのプレー姿勢にも批判が集まるようになった。

 メジャーデビューからすぐニューヨークのスターとなったハービーは、きらびやかな大都市の誘惑に絡めて取られていった。有名モデルと浮名を流し、ナイトクラブで豪遊する日々。謙虚さを失い、プレーへのモチベーションも薄れていったのかもしれない。
 
 17年5月には、病気を理由に練習をサボってゴルフに行ったことが判明して球団から3試合出場停止の処分を受けた。この時は「自分の行動が恥ずかしい」と反省の色を見せたハービーだったが、その約1年後には登板日の朝までナイトクラブで飲み明かしていたことが発覚。直後にメッツを戦力外となり、レッズへトレードされた。

 ヤンキースとそのファンに支配されていた街で、ハービーはメッツファンが手にした自前のスーパースターだった。それだけに、ヒーローの凋落に一抹の寂しさを感じたファンは多かったに違いない。

 追われるようにニューヨークを去った後、ハービーはレッズ、エンジェルス、アスレティックス、そして今回のロイヤルズと数多くのチームを渡り歩いている。そんな元エースの現状を見て、メッツファンはまたため息をつく。“ダークナイト”はクイーンズのファンにとって、いつまでも“What If(もしも運命が違っていたら……)”と思い続ける存在なのかもしれない。

文●杉浦大介

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