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MLB

トラウトがいるのに最下位に低迷…エンジェルスはなぜ弱いのか

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2020.08.30

②年俸バランスの偏り
 『SLUGGER』の誌面では以前から指摘しているが、エンジェルスの年俸バランスはかなりいびつな構成になっている。トラウトを筆頭に上位5人はいずれも野手で、この5人だけで1億2500万ドル(約131億6750万円)に達する。一方、投手はフリオ・テラーンの900万ドル(約9億4800万円)が最多。チーム全体でも見ても、総年俸の実に8割近くが打者に充てられている。このバランスは明らかに異常だ。事実、この歪みがそのまま投手成績の低迷にも反映されている。

 実は、オーナーのアート・モレノは投手との大型契約を好まないと言われていて、昨オフに大物獲得に動かなかったのもこの意向を反映していると考えられる。確かに、故障のリスクを考えれば及び腰になるのも理解できなくはないが、その一方でコールやマックス・シャーザー(ナショナルズ)、ジェイコブ・デグロム(メッツ)といった超一流投手はその実力に見合った報酬を得ているのもまた事実。結局、中途半端な投手をとっかえひっかえ獲得してはどれも成功しないというパターンを繰り返しているのがエンジェルスの現状なのだ。

③ファーム組織の停滞
 もちろん、FAやトレードで大物を補強しなくとも、投手陣を強化することは不可能ではない。レイズやアスレティックスは慢性的な資金難にあえぎながらも優れた若手育成と隠れた才能を発掘する優れた目利きによって優秀な投手陣を作り上げた。
 
 だが、エンジェルスでは近年、エース候補と呼ばれるような素材がななかなか出てこない。①で指摘した若手投手の相次ぐ故障も要因だが、優れたタレント自体が少ないのも事実だ。しかも、8月4日にデビューしたトップ・プロスペクトのジョー・アデルを筆頭に、現在チームで期待を集めている選手の大半は野手。『MLB.com』によるプロスペクト・ランキングでは、上位10人中投手は2人しかいない。大型補強には消極的、下からの戦力供給も期待薄となれば、投手難の早期解決は期待できそうにない。

 昨年9月、『CBS Sports』が『首が危ないGMランキング』という不吉な企画を発表した際、エプラーGMは2位に入っていた。そして、次のように書かれていた。「もし再びポストシーズンを逃すようなことがあれば、エプラーはおそらく職を追われるだろう」。ポストシーズンどころか、21年ぶりの地区最下位が濃厚とあっては、おそらくGM更迭は避けられまい。ただ、GMを交代させたところで問題が解決するわけではない。トラウトや大谷の才能をいたずらに「浪費」する状態はいつまで続くのだろうか。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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