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プロ野球

“第2の全盛期”を謳歌するダルビッシュ有と涌井秀章。一度離れた「関係性」が10年を経て再び交わる

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.08.31

 もっともダルビッシュも順風満帆だったわけではない。15年にはトミー・ジョン手術を経験、17年ワールドシリーズでは大炎上して大バッシング(後日、アストロズのサイン盗みが発覚して鎮火したが)、18年から移籍したカブスでも昨年途中までは不本意な投球が続いていた。涌井もFA加入したロッテで15年に最多勝を獲得し、再び先発投手として一定の活躍をしていたものの、30歳を過ぎて往年のような輝きはなかったのは否めない。17年オフにメジャー移籍を試みたが満足のいくオファーはなく、渡米を断念したこともあった。

 しかし、球界最高のライバルとして牽引した二人が、一時の失速を経てほぼ時を同じくして復活している。全盛期を見た者としては胸が躍らずにはいられない。

 圧巻の球威と多彩な変化球を駆使し、時に雄叫びを上げて打者を抑えるダルビッシュ。泰然自若、淡々と長いイニングをこなしてチームを勝利に導く涌井。第1の全盛期から10年の歳月が経ち、その佇まいに多少の変化はあろうとも、本質はあの頃とまったく変わらない「カッコイイ」2人がそこにいるのだ。
 
 涌井は数年前、またいつかダルビッシュと投げ合いたいと語っていた。プロで6度対戦した二人の成績はダルビッシュから見て3勝1敗。勝敗にやや開きがあるとはいえ、彼らが対峙した時の空気感は他の試合と違うものがあった。特に2008年の開幕第2戦、札幌ドームでの試合は両者とも9回無失点という「至高の投げ合い」。ダルビッシュは9回でマウンドを降り、延長10回裏も続投した涌井は最後に力尽きた。しかし、同じ132球、打者35人で終わったのは、やはり運命めいた何かを感じる。

 熱い戦いを繰り広げてきた“親友”に関して、ダルビッシュは自身のYouTube動画『高校時代からのライバルで良き友の涌井との話』で語っている。初めて涌井を認識した時の話、走る体力に圧倒され、プロを目指すにあたり不安を覚えさせられた話、ピッチャーとしての自分を作り上げてくれた存在など、その思いの深さはやはり他の選手とは違うものなのだろう。

 そして今年の8月12日、ダルビッシュはこの日に揃って7勝目を挙げた涌井と菅野智之(巨人)について、「涌井、菅野投手が無傷の7勝目。2人ともダルビッシュセレクションで選ばれてるわけだし、ダルビッシュセレクション効果って言っても過言ではあるんだよなぁ」として、「もっと言うと2人は俺が育てたって言っても過言ではある」とツイッターに投稿した。

 確かに多少“過言”かもしれない。しかし、ダルビッシュと涌井のキャリア、これまでの言動を見てくと、お互いがお互いを育て合ってきたように感じられてくる。今は別々のフィールドにいるけれども、彼らの「ライバル関係」は最後まで続いていくのではないか。「第2の全盛期」と言っていい今年も、その関係性のほんの1パートなのかもしれない。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)
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