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【MLB珍獣図鑑:ブレイク・スネル】レイズのエース、“スネルジラ”は球界屈指のゲーマー

THE DIGEST編集部

2020.09.17

 生まれはシアトル近郊で、子供の頃はもちろんマリナーズの大ファン。当時好きだった選手として、ケン・グリフィーJr.、アレックス・ロドリゲス、イチローといった「定番中の定番」に加えて、1998年から99年途中まで在籍しただけの一塁手、デビッド・セギーの名前を持ち出すあたり、かなりの入れ込みぶりだったことが伝わってくる。

 メジャーで活躍するにつれ、「スネル」と「ゴジラ」を掛け合わせた愛称の“スネルジラ”も定着した(本来は兄のニックネームだったのだが、「自分の方が似合ってる!」と強引に継承したらしい)。昨年5月には本拠地トロピカーナ・フィールドに高さ約12mもあるビニール製の巨大なスネルジラが登場して話題になった。

 Twitchでプレー実況している時のスネルは意外なほど快活でおしゃべり。マウンド上では、まるでサイコパスのような冷たい目つきが印象的なだけに、ギャップに驚かされる。実は、Twitchを始めた理由もそこにあるのだという。「本当の自分を知ってもらいたいと思うようになったんだ。(マウンド上での)僕は僕じゃない。あれは仕事をしている姿さ。仕事の時は真面目にするのが当たり前だろ」。
 
 実際、意外なまでに生真面目な一面もある。彼はこれまでアルコールを一度も口にしたことがない。理由は「必要性を感じないから」。昨年、チームがプレーオフ進出を決めた際のシャンパンファイトでも、一滴も飲まなかったそうだ。

 意外と言えば、実は少年時代のスネルは自分のゲーム機を持っていなかったという。さまざまなコメントから想像するに、当時の暮らしは決して裕福なものではなかった様子がうかがえる。本人も「ゲームのおかげで、いろんなことから現実逃避できた」と語っている。彼にとって、ゲームは単なる趣味の枠を超えたもの、大げさに言えば自分を救ってくれた“恩人”のような存在なのかもしれない。

 昨年夏、スネルはタンパの小児病院に2万ドル相当のゲーム機とソフトを寄付した。「ゲームをすることで、子供たちが少しでも痛みを忘れられるなら素晴らしいじゃないか」。もちろん、そこには自らのかつての体験が反映されているに違いない。

 ここまでくると野球選手とゲーマー、どちらがメインなのか分からなくなってくる。ぜひ本業でも、「プレーヤーズ・リーグ」と同様に、レイズを球団史上初の世界一へと導いてほしい。

文●久保田市郎(SLUGGER編集部)

※『SLUGGER』2020年7月号より転載
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