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プロ野球

【氏原英明の本音で勝負!】順位を上げるためだけの戦いに価値はない。未来へ向けて舵を切るべき球団とは?

氏原英明

2020.10.08

 森や山川の不調はともかく、秋山がチームを去ることは以前から想定できた事態だった。秋山と同じレベルを期待するのは酷だとしても、1番打者を固定できなかったことは今季の停滞の大きな要因となった。

 10月2日のロッテ戦で気になるシーンがあった。延長10回表にメヒアが澤村拓一から大きな一発放って1対0で制した試合だ。

 0対0で迎えた9回表、先頭の木村文紀がロッテの守護神・益田直也から口火を切る二塁打で出塁。得点の期待が高まる場面だったが、ここで辻発彦監督は1番の金子侑司に送りバントを命じた。バントは成功したものの、後続が倒れて点が入らなかったシーンだ。

 優勝争いを演じているチームなら、この場面の送りバントは当然の策と言える。だが、今年の西武は違う。新たな1番打者を確立しなければならない状況で、ここでバントを命じることは育成の機会になり得るだろうか。もし、金子を1番打者として育てたいなら、送りバントという選択肢では育つものも育たないのではないか。「お前はここでヒットを打って結果を出すべき人間だ」というメッセージを送るべきではなかったか。
 
 チームの軸となる選手は、そうした壁を必ず乗り越えてきている。
 大卒8年目、30歳を迎えた金子がチームを引っ張る存在になれていないのは、プレッシャーがかからない場面でばかり起用を続けてきたからではないか。複数年契約を与えるほど期待をかけている選手であれば、それに見合った重責を担わせなければいけない。

 もっとも、この時点ではまだ西武に自力Vの可能性が残っていた。だから、手堅い攻めにこだわったという考えも理解できる。本当の問題はここからだ。

 今季、西武はポスト秋山の不在に苦しんだ。目先の試合に勝つために取っ替え引っ替え1番打者候補を探し続けたが、結局は見つからなかった。だからこそ、今は今後長年にわたってチームを牽引する1番打者を育成するべき時なのではないか。

 優勝の可能性が限りなく低くなり、残り試合も少なくなってきたこの時期に、その課題を克服するための第一歩を踏み出すべきだ。機能しなかい打線にいつまでも期待することは、来年以降に歪みとなって跳ね返ってくるだろう。指揮官のマネジメントや采配の拙さを誤魔化すような、順位を上げるためだけの戦いに価値はない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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