一方、昨年の日本シリーズ第4戦に先発した菅野のピッチングも注目だ。4回表、グラシアルに3ランを打たれた場面は、多くの人が印象に残っているだろう。
だが、この時は3球でグラシアルを2ストライクに追い込んでおり、菅野が優位に立っていた。マスクをかぶっていた小林誠司は、この対決をこう振り返っている。
「(グラシアルは)変化球のタイミングをとっていたのが分かったので、ストレートでしっかり追い込めた。そうしてこっちの有利なカウントまで持ってきていたんですけど、まとめの部分で攻めきれなかったですね」
追い込まれれば狙い球を変えてくるだろうと踏んだバッテリーは、そこからスライダーを2球続けたが、2つとも外れてフルカウント。やや膨らんで入った最後の1球もやはりスライダーだったが、これがグラシアルのバットの餌食になった。この3点が響いて巨人は3対4で敗れ、菅野は敗戦投手に。そして、ソフトバンクに4連勝での日本一を許してしまった。
昨季の菅野は持病の腰痛がパフォーマンスを低下させ、2度の登録抹消を経験するなど、ベストコンディションを保つことができなかった。シリーズ初先発が第4戦だったことが、その実情を表している。
とはいえ、菅野はそれを言い訳にせず、自身への反省を促していた。
「今まで(の野球人生)が順調にいきすぎていたのかなと思う。自分を変えられるシーズンになったのかなと思います。もう一度自分を見つめ直して、レベルを上げるべきところは上げる。良い状態で来季に臨みたい」
昨シーズン終了後、菅野は千賀も師事する『鴻江スポーツアカデミー』の門をたたき、フォーム改造に取り組んだ。昨季の敗戦から自身を見つめ直した再出発は、菅野の向上心の表れに他ならない。菅野ほど実績のある投手には、なかなかできることではない。
そして、再出発はこれ以上ないほどうまくいった。開幕から13連勝を記録するなど完全復活し、巨人のリーグ制覇の旗頭となった。球界を代表するエースに返り咲いた菅野が迎える今年の日本シリーズは、これまで以上のワクワク感がある。どんなピッチングを見せてくれるのか、グラシアルへどのように“リベンジ”するのかを楽しみにしたい。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
【日本シリーズPHOTO】ソフトバンクが3年連続日本一!!試合後には阿部慎之助も宙に舞う!!!
だが、この時は3球でグラシアルを2ストライクに追い込んでおり、菅野が優位に立っていた。マスクをかぶっていた小林誠司は、この対決をこう振り返っている。
「(グラシアルは)変化球のタイミングをとっていたのが分かったので、ストレートでしっかり追い込めた。そうしてこっちの有利なカウントまで持ってきていたんですけど、まとめの部分で攻めきれなかったですね」
追い込まれれば狙い球を変えてくるだろうと踏んだバッテリーは、そこからスライダーを2球続けたが、2つとも外れてフルカウント。やや膨らんで入った最後の1球もやはりスライダーだったが、これがグラシアルのバットの餌食になった。この3点が響いて巨人は3対4で敗れ、菅野は敗戦投手に。そして、ソフトバンクに4連勝での日本一を許してしまった。
昨季の菅野は持病の腰痛がパフォーマンスを低下させ、2度の登録抹消を経験するなど、ベストコンディションを保つことができなかった。シリーズ初先発が第4戦だったことが、その実情を表している。
とはいえ、菅野はそれを言い訳にせず、自身への反省を促していた。
「今まで(の野球人生)が順調にいきすぎていたのかなと思う。自分を変えられるシーズンになったのかなと思います。もう一度自分を見つめ直して、レベルを上げるべきところは上げる。良い状態で来季に臨みたい」
昨シーズン終了後、菅野は千賀も師事する『鴻江スポーツアカデミー』の門をたたき、フォーム改造に取り組んだ。昨季の敗戦から自身を見つめ直した再出発は、菅野の向上心の表れに他ならない。菅野ほど実績のある投手には、なかなかできることではない。
そして、再出発はこれ以上ないほどうまくいった。開幕から13連勝を記録するなど完全復活し、巨人のリーグ制覇の旗頭となった。球界を代表するエースに返り咲いた菅野が迎える今年の日本シリーズは、これまで以上のワクワク感がある。どんなピッチングを見せてくれるのか、グラシアルへどのように“リベンジ”するのかを楽しみにしたい。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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