専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

野球界の“掟”に縛られない全力プレーでソフトバンクを牽引!頼れる4番グラシアルの“真面目伝説”

喜瀬雅則

2020.11.23

「こんな真面目な外国人は、初めて見たよ」と小川一夫前二軍監督が驚きを隠せなかったのは、入団1年目の2018年のことだった。打撃練習では普通、打者は目慣らしをかねて最初の2、3本はバントをする。だが、主力級なら試合でバントのサインが出ることがまずないため、ハーフスイングのような形を取るケースがほとんどだ。

 ところが。
 
「グラシアルは、ちゃんと腰を落として、バントの構えをして、打球を殺して、転がすんだよ。あんな丁寧にバントをする外国人、俺は初めて見たよ」と小川前監督。こうしたグラシアルの“真面目伝説”は、あちらこちらから聞こえてくる。

 1年目の5月、グラジアルは試合中に左手薬指を骨折し、リハビリと再調整に2か月半を要した。その間、筑後のファーム施設でみっちりとウェイト・トレーニングに取り組んだ結果、来日当時のユニホームがきつくなってしまい、ワンサイズ上のものを発注し直すことになったという。ファームの遠征でも、炎天下のグラウンドで決して全力疾走を欠かさなかった。
 
 今シリーズでは2試合とも左翼を守ったが、キューバ代表でもソフトバンクでも、本職のサードを守る機会がある。そういう時、投手がピンチになると、グラシアルはたびたびマウンドにやって来る。

「何か言ってくれているんです。言葉は分からないんですけど、熱いですね。ハンパではないリーダーシップを感じます」と絶賛したのは和田毅だ。メジャーの大舞台も経験したことのある39歳のベテラン左腕を熱くさせるだけのものが、グラシアルにはあるのだ。

 日本シリーズではこれまで2試合ともにマルチ安打をマークし、7打数4安打の打率.571を記録している。昨年の日本シリーズでは4戦3発でMVPに輝いた男は、プレーでも、そして精神面でも、今年も頼りになりそうだ。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号