では、他にMVPにふさわしい候補はいないのだろうか。改めてWARのトップ10を見ると、1位はヤクルトの村上。ただ、彼の場合はチームが最下位に沈んだことが大きなネックになる。プロ野球記録を塗り替えるほどの活躍ならともかく、下位に低迷したチームからのMVP選出には抵抗を覚えるファンも多いだろう。2位は同じヤクルトの青木、3位の鈴木が所属する広島も5位に低迷した。
ここで、やや意外(?)な選手が浮上してくる。リーグ4位のWAR5.4を記録した坂本勇人(巨人)だ。今季の坂本は開幕前に新型コロナウイルス感染が発覚。すぐに戦列に復帰したが、40本塁打を放ってMVPを受賞した昨季ほどのインパクトはなかった。
だが、実際には今季も非常に質の高いシーズンを送っていた。19本塁打を放ち、出塁率は.379。OPS.879は岡本の.907と比べてもそこまで引けを取らない。むしろ、遊撃手であることの希少性も加味すれば、より価値が高いとも考えられる。ショートというプレミアムポジションで12球団トップの攻撃力を発揮し、なおかつ守備も一流。走塁も含め、全方位で貢献したことがWARの数値にも反映されている。
坂本に欠けているものがあるとすれば、上でも述べたようにやはり印象度やストーリー性だろう。何と言ってもMVPはその年のリーグの顔であり、多くのファンが(程度の差こそあれ)「この選手なら」と納得できる者であるべきだ、という考えに立つならば確かに今季の坂本は厳しい。
逆に、「ストーリー性」で最も印象度が高いのは、WARではリーグトップ10圏外の菅野だろう。昨季は腰痛で思うような成績を残せず、優勝会見で涙を浮かべたエースが、腕から始動する新しい投球フォームを導入した今年は開幕13連勝と鮮やかな復活。菅野の快投がチームのロケットスタートに寄与した部分は大きく、数字以上の印象度を残したことは間違いない。
周知のように、MVPは「Most Valuable Player」(最も価値ある選手)の略だが、何を持って「価値が高い」とするか明確に定義されているわけではなく、実際には個々の投票者の考えに委ねられている。
岡本か菅野か、それとも坂本か。絶対的な本命がいないことが、かえって「MVPとは何か?」という根本的な問いを浮き彫りにしたとも言える。果たして17日に最高の栄誉を手にするのは誰だろうか。
構成●SLUGGER編集部
ここで、やや意外(?)な選手が浮上してくる。リーグ4位のWAR5.4を記録した坂本勇人(巨人)だ。今季の坂本は開幕前に新型コロナウイルス感染が発覚。すぐに戦列に復帰したが、40本塁打を放ってMVPを受賞した昨季ほどのインパクトはなかった。
だが、実際には今季も非常に質の高いシーズンを送っていた。19本塁打を放ち、出塁率は.379。OPS.879は岡本の.907と比べてもそこまで引けを取らない。むしろ、遊撃手であることの希少性も加味すれば、より価値が高いとも考えられる。ショートというプレミアムポジションで12球団トップの攻撃力を発揮し、なおかつ守備も一流。走塁も含め、全方位で貢献したことがWARの数値にも反映されている。
坂本に欠けているものがあるとすれば、上でも述べたようにやはり印象度やストーリー性だろう。何と言ってもMVPはその年のリーグの顔であり、多くのファンが(程度の差こそあれ)「この選手なら」と納得できる者であるべきだ、という考えに立つならば確かに今季の坂本は厳しい。
逆に、「ストーリー性」で最も印象度が高いのは、WARではリーグトップ10圏外の菅野だろう。昨季は腰痛で思うような成績を残せず、優勝会見で涙を浮かべたエースが、腕から始動する新しい投球フォームを導入した今年は開幕13連勝と鮮やかな復活。菅野の快投がチームのロケットスタートに寄与した部分は大きく、数字以上の印象度を残したことは間違いない。
周知のように、MVPは「Most Valuable Player」(最も価値ある選手)の略だが、何を持って「価値が高い」とするか明確に定義されているわけではなく、実際には個々の投票者の考えに委ねられている。
岡本か菅野か、それとも坂本か。絶対的な本命がいないことが、かえって「MVPとは何か?」という根本的な問いを浮き彫りにしたとも言える。果たして17日に最高の栄誉を手にするのは誰だろうか。
構成●SLUGGER編集部