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無類のタフネスを誇った“悪太郎”――通算324勝の大エース、ドン・サットンの肖像〈SLUGGER〉

豊浦彰太郞

2021.01.26

 4勝2敗でヤンキースが世界一となったこのシリーズでの興味の一つが、両球団の対照的なスタイルだった。ヤンキースはFA時代の幕開けとともに、オーナーの“ザ・ボス”ことジョージ・スタインブレナーが市場から買い漁った選手を中心に編成された“The Best Team Money Could Buy(カネで買った最強チーム)”。一方、ドジャースは生え抜き選手中心で、ラソーダ監督の下に結束する“ファミリー”だった。

 だが、そんなドジャースのイメージは翌年崩れ去ってしまった。原因となったのは他ならぬサットンだ。シーズン終盤のニューヨーク遠征中のこと。シェイ・スタジアムのクラブハウスで、主砲のスティーブ・ガービーがサットンに詰め寄って口論になった。するとサットンはガービーに襲いかかり、2人はそのまま取っ組み合いになった。この一件は大きく報道され、ドジャースファンに衝撃を与えた。
 
 伏線は、サットンが『ワシントン・ポスト』紙の取材で「過去2年のリーグ優勝の立役者は、ガービーではなくレジー・スミス(その後巨人にも在籍)だ」と語ったことだった。さらにガービーの人格や家族を辱めるようなコメントもあったようで、紳士的なキャラクターで人気を博したガービーもさすがにブチ切れたのだ。当時、この一件を日本の野球専門誌の増刊号で取り上げた故・八木一郎氏(セ・リーグ企画部長で“大リーグ通”として知られていた)は、「年俸格差への不満が背景にあったのでは」と記していた。

 いずれにせよ、団結、結束といったドジャースのイメージが幻想でもあったことを知らしめたサットンは、マウンド上の素晴らしい業績だけでなく、“悪太郎”ぶりでもぼくの脳裏に焼き付いている。

文●豊浦彰太郎
 
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