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MLB

22歳にして最強軍団アストロズの中軸を務めるヨーダン・アルバレス、怪物スラッガーに隠された〝ルーツ〞とは?

城ノ井道人

2019.10.28

打球を芯で捉える能力と線眼球の良さが特徴。物静かな性格でクラブハウスではどちらかというといじられキャラだ。(C)Getty Images

打球を芯で捉える能力と線眼球の良さが特徴。物静かな性格でクラブハウスではどちらかというといじられキャラだ。(C)Getty Images

 デビュー戦の重圧がかかる状況でこうした冗談が通じるのは信頼関係があるからだ。「春のキャンプでベテランたちが彼と打ち解けるために声をかけていた。だから、アルバレスにとってクラブハウスは居心地の悪くない場所だったはず」とAJ・ヒンチ監督は中心選手たちの気遣いを明かす。

 アレドミーズ・ディアズとユリ・グリエルは、アルバレスと同じキューバ出身ということもあり特に彼を可愛がった。ディアズは彼の昇格を知ると、いち早くお祝いのメッセージを送って歓迎。ホゼ・アルトゥーベは「キャンプで彼のことを見て誰もが才能を高く評価していた」。本塁打の罰金をもちかけたのも「(打つことは)予想通りさ。俺たちは彼の3Aの成績をチェックしていたんだから」と、選手の間でも彼の実力は周知のことだった。


 アルバレスの特徴として最初に挙がるのが、打球を芯で捉える能力と選球眼の良さ。次いで巨体から生み出されるパワーとなる。だが、結果を出し続けている理由となると、彼の頭脳にヒントがありそうだ。3本塁打を記録した8月10日の試合で先発投手のアーロン・サンチェスが打席での思考を尋ねると、少しも言い淀むことなく相手投手の傾向や配球を説明したという。

「一球一球、説明してくれた。あの若さであそこまで理解してるとなると、通常の成長曲線の先を行っていると言えると思う」とはサンチェス。また、同じ試合でヒンチ監督は「昨日の空振りを糧に今日は最初からいい打席だった」と失敗からの学びに注目していた。前日の第2打席、第3打席では高めの4シームにつられて珍しく4球、3球で連続三振を喫していたが、この日は第1打席、初球内角の4シームをホームラン。前日の試合でオリオールズが内角低めから攻めていたのを理解した上での、狙いすました一発だった。

 
 シーズン前からアルバレスの活躍を予期していた人がいれば、相当の通だろう。彼には常に守備の問題がつきまとっていたため、超の付く有望株とは見なされていなかった。

 だが、その打撃は少年時代から本物だった。「スウィング、コンタクトの質。初めて見た時からパワーより技術を評価していた。柵越えではなくハードにラインドライブを打つアプローチ。だから彼の打撃は常に安定感があった」とはプロ入り前から彼を見ているアストロズの元国際スカウト部長オズ・オカンポの言。実は、アルバレスがアストロズの一員になるまでには数奇な運命と言うべき出来事があった。


 16年にキューバから亡命したアルバレスをアストロズは早くから狙っていた。特に彼に惚れ込んでいたスカウトのチャーリー・ゴンザレスは深い信頼関係を築き、契約期限が近づくとアルバレスが「僕を獲ってください」と電話をしてくるほど相思相愛だった。

 だが現場の熱心な推薦にもかかわらず、ジェフ・ルーノーGMの決断は
16年7月から始まる翌年の国際アマチュアFA市場に資金を投じるため、アルバレスへの予算は割けないというものだった。結局、アルバレスは6月にドジャースと200万ドルで契約。それを聞いたゴンザレスは大いに落胆した。

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