ところが、1か月余り経った7月のある日、傷心のゴンザレスにルーノーGMから電話が入った。「ドジャースとジョシュ・フィールズのトレードの件で詰めに入っているんだが、誰が欲しい?」「誰かだって? 悪い冗談だろ?」。
答えは決まっていた。すでに何人かの有望株を断られていたルーノーがアルバレスの名を挙げると、ドジャースのファーハン・ザイディGM(現ジャイアンツ編成総責任者)は訝しげに高額の投資をしたばかりだと話し始めた。そこでルーノーが口を挟む。「もう一人のアルバレスのほうだ」。
ザイディの頭に浮かんだのは1600万ドルで獲得したばかりのキューバ人投手ヤディアー・アルバレスだった。ルーノーが思い違いを正すと、ザイディは「ああ……キューバの打者がいたな」と思い出し、トレードにゴーサインを出した。当時、〝打者〞のアルバレスはドジャースの練習施設で身体を作っている最中で、まだ1試合もプレーしていなかった。こうしてアストロズは、怪物の卵を防御率6.89のリリーフ投手との1対1の交換で手に入れたのだった。
9月に入ってもアルバレスの勢いは止まらない。9日には23号、24号を放って球団新人記録を更新。2発目の一撃はミニッツメイド・パーク史上3人目のアッパーデックへの特大の一発となり、球団は打球が飛び込んだ座席をオレンジ色に塗ってこれを称えた。ただ、どれだけ派手に活躍しても彼の落ち着いた佇まいと打席でのアプローチは変わらない。「彼の一番いいところは人柄。才能があるだけではダメ。みんなと一丸になれるかが大事なんだ」とアルトゥーベ。
弱冠22歳にして常勝軍団に欠かせない戦力の一人と認められているアルバレスは、レイズとのディビジョン・シリーズでもOPS.824と活躍。ヤンキースとのリーグ・チャンピオンシップシリーズでは6試合でわずか1安打と不発に終わるも、ワールドシリーズでは復調。10月27日の第5戦では先制2ランを含む3打数3安打と大爆発し、チームを勝利に導いた。
文●城ノ井道人
※『スラッガー』2019年11月号より加筆修正
答えは決まっていた。すでに何人かの有望株を断られていたルーノーがアルバレスの名を挙げると、ドジャースのファーハン・ザイディGM(現ジャイアンツ編成総責任者)は訝しげに高額の投資をしたばかりだと話し始めた。そこでルーノーが口を挟む。「もう一人のアルバレスのほうだ」。
ザイディの頭に浮かんだのは1600万ドルで獲得したばかりのキューバ人投手ヤディアー・アルバレスだった。ルーノーが思い違いを正すと、ザイディは「ああ……キューバの打者がいたな」と思い出し、トレードにゴーサインを出した。当時、〝打者〞のアルバレスはドジャースの練習施設で身体を作っている最中で、まだ1試合もプレーしていなかった。こうしてアストロズは、怪物の卵を防御率6.89のリリーフ投手との1対1の交換で手に入れたのだった。
9月に入ってもアルバレスの勢いは止まらない。9日には23号、24号を放って球団新人記録を更新。2発目の一撃はミニッツメイド・パーク史上3人目のアッパーデックへの特大の一発となり、球団は打球が飛び込んだ座席をオレンジ色に塗ってこれを称えた。ただ、どれだけ派手に活躍しても彼の落ち着いた佇まいと打席でのアプローチは変わらない。「彼の一番いいところは人柄。才能があるだけではダメ。みんなと一丸になれるかが大事なんだ」とアルトゥーベ。
弱冠22歳にして常勝軍団に欠かせない戦力の一人と認められているアルバレスは、レイズとのディビジョン・シリーズでもOPS.824と活躍。ヤンキースとのリーグ・チャンピオンシップシリーズでは6試合でわずか1安打と不発に終わるも、ワールドシリーズでは復調。10月27日の第5戦では先制2ランを含む3打数3安打と大爆発し、チームを勝利に導いた。
文●城ノ井道人
※『スラッガー』2019年11月号より加筆修正