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プロ野球

トミー・ジョン手術から3年ぶりの1軍登板を目指す、オリックスの黒木優太。復活への最終章が始まった

北野正樹

2021.03.16

 無理もしない。キャンプでのブルペンでは、投球前に、捕手に球数を告げる。最も多かった日で35球。翌日にシート打撃の予定があった日には、15球で切り上げた。球数は5球、10球の単位。どんな内容でも、それを崩すことはなかった。「いい終わり方をしようとして、あと1球、もう1球と投げたくなるものだが、それだけは絶対にしたくなかった」。徹底した自己管理を行い、2度と故障はしないという確固たる信念は最後まで揺らがなかった。

 紅白戦の2試合を含め、今季8試合に登板。3分の2回、球数25で降板した3月2日のロッテ戦(京セラドーム大阪)を除き、登板は1イニング限定で、最も多い球数は21。キャンプ中盤では「まだ、投げた翌日がどうなるのか心配」と、不安を抱えながらのマウンドだったが、ペースを守り段階を踏んでいく調整が順調に進み、キャンプ終盤には「変に力まずに投げることが出来て、不安はなくなってきている」と手応えを感じ取っていた。
 
 14日の試合後、「今まで球数を制限してきたが、もう最終段階。もう、そういう段階から外れてもいいかなと考えている」と切り出した黒木。「連投も入ってくると思うが、連投できるだけの準備はしてきた」とも。再発を防ぐため、自分の体に向き合い、オーバーペースにならないようにかけていた制限をなくす。それだけ、この日の投球に手応えがあったということだろう。

 春季キャンプでは、憧れの黒木さんから「絶対に治るから焦らないで」とアドバイスを受けた昨年に続き、今年は「無理せずにね」と激励された。黒木さんは、練習が始まる午前9時過ぎから球場入りし、アップ前の黒木を待ち構えてくれていたという。「ブルペン入りする日ではなかったので『キャッチボールを見る』と言ってくださって。ありがたいことです」と感謝する。

「肘は、全く問題はない。元々、150キロ以上を投げてきた。もっとよくなると思っているから、満足はしない」と表情を引き締めた黒木。開幕まで10日。リミッターを解除した右腕が、ジョニー黒木のアドバイスを胸に3年ぶりの1軍マウンドに向けスパートをかける。

文●北野正樹(フリーライター)
【プロフィール】きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。

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