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MLB

指名ギリギリまで起きる情報戦でドラマが起きる。日本とは大きく異なるMLBドラフトの醍醐味とは?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.07.11

■各球団によって違う契約金総額

 日本では、指名した選手の契約金の上限は1億円+出来高5千万円までと定められているだけだが、MLBのドラフトでは、球団ごとに使える契約金の総額(ボーナス・プール)がかなり厳密に定められている。

 たとえば、今年のドラフトで全体1位指名権を持つパイレーツは、10巡目までの契約金総額を1439万ドル(約16億円)までに収めなければならない。これを5%以上超過すると、翌年の1巡目指名権が剥奪されるなど厳しいペナルティがある。さらに、こちらは超過してもペナルティはないが、順位ごとの目安契約額(ピック・バリュー)も設定されている。この制限の中で、いかに多くの有望選手を獲得できるかが、各球団のGMの腕の見せ所となる。

 日本と違ってMLBでは、ドラフト候補にも代理人(アドバイザー)がつく。特に高校生では、大学進学をちらつかせて相場以上の契約金を要求する選手も少なくない。そのため、1巡目ではあえて安い契約金で済みそうな選手を指名し、3~4巡目あたりで交渉難航が予想される選手に突撃して1巡目指名で浮いた契約金を回す、という戦略を採るチームが出てくる。

 FA補償にドラフト指名権が組み込まれているのもMLBの大きな特徴で、複数の1巡目指名権を得るチームも少なくない。たとえば、19年のダイヤモンドバックスは全体34位までに4つも指名権を持っていた。こうしたケースではとりわけ、上に挙げた「戦略性」が重要になってくる。スカウトの目利きや情報力、GMの大局観や決断力、すべてを総動員しなければ「ドラフトの勝者」になることはできないのだ。
 
 契約金の規模自体も日本とはケタ違いだ。昨年のドラフトで全体1位指名されたスペンサー・トーケルソン(タイガース)が得た契約金は約841.6万ドルで、日本円にすると何と約9億2600万円。トーケルソンを含め、500万ドルを超えた選手が8人もいた。先述したように、日本のドラフトでは出来高を含めても最高1億5000万円だが、MLBでは契約金だけで日本のトップ選手の年俸に匹敵する金額が動いていることになる。

■2021年ドラフトの注目ポイント

 このように、完全ウェーバー制や契約金総額の制限などのおかげで、MLBのドラフトはより戦略性の高いものになっている。それだけに各球団の選択が運命を大きく分けることになるのだが、今年は特にその傾向が顕著になりそうだ。

 というのも、21年のMLBドラフトは「大本命不在」で、史上稀に見る大波乱が予想されるからだ。毎年、ドラフトが近くなると、各有力媒体が各球団の上位指名を予想する「モック・ドラフト」を公開する。例年は全体1~10位あたりまではどの媒体の予想もほぼ同じで、実際の結果もその通りになることが多い。しかし今年は、直前になっても各媒体の予想がかなり錯綜している。これは歴史的に見てもかなり珍しい事態だが、裏を返せばエンタテインメントとして楽しむ分にはこれほど面白いドラフトもない。

 好打好守が高く評価されている高校生遊撃手のマーセロ・メイヤー、同じく高校生遊撃手で5ツールのポテンシャルを秘めたジョーダン・ロウラー、大学No.1捕手のヘンリー・デービス、強豪バンダービルト大でWエースとして活躍するジャック・ライターとクマー・ロッカーらが有力選手として挙げられる中、全体1位の称号を得るのは果たして誰なのだろうか。

構成●SLUGGER編集部
 

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