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世界で結果を出すために自分を変えた――渡米3年目でオールスター選出をつかんだ菊池雄星の「成長物語」<SLUGGER>

氏原英明

2021.07.12

 昨季からは投球フォームを大きく変えた。テークバックをコンパクトにするフォームはこれまでの姿を一新させるものだったが、これも、研究の末にたどり着いた投球フォームだった。

 それまで作り上げてきたものをひっくり返すほどの大きな“変化”について、菊池はメジャー2年目のシーズン前にこう語っている。

「高いレベルに来ないと、本当の意味で変えようと思わなかったし、日本の時に同じことをしていて、こうなっていますよと指摘されたとしても、『結果を出しているからいいじゃん』って終わらせていた自分がいたと思います。今年に関しては変えることに怖さがまったくないですね。そうさせてくれたのはこの国、この環境だからと言えます。とんでもないエンジンを持っている選手が横で投げているわけです。そこに対抗しよう、世界で戦って結果を出そうしたら、必要性を感じました」

 昨季、ボールの質は確実に変わった。ただ、制球面で苦労することも多かった。さらなるバージョンアップを図った今季は力感のない投球フォームで安定感が出るようになった。コントロール重視といえど、ボールの勢いを抑えたわけではなく、4シームは99マイルを計測。ストレートに近い球速帯のスライダー、カーブ、スプリットは、打者の手元まで球種の判別が難しいものになり、好成績へとつながった。
 
 最初の2年は大きく負け越し、防御率がともに5点台。今季はここまで16試合に投げて6勝4敗、防御率3.48。過去2年は40%に満たなかったQS率は70%に届く勢いで、マリナーズのスコット・サーバイス監督も「チームで一番の安定感」と太鼓判を押すほどだ。

 思えばマリナーズ入団当初から、菊池は「3年目からが勝負」と位置付けてきた。もちろん、結果が出なくてもいいとは思っていたわけではなかったが、紆余曲折や試行錯誤を経て3年目で手にしたオールスター選出は、菊池が真っすぐメジャーの成功を目指してきた足跡そのものとと言えるだろう。

 さらに感慨深いのは、花巻東の後輩でもある大谷翔平(エンジェルス)とともに出場できることだ。これは菊池も喜んでいることだろう。
 
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