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指名ギリギリまで起きる情報戦でドラマが起きる。日本とは大きく異なるMLBドラフトの醍醐味とは?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.07.11

昨年のドラフトで指名選手の名前を読み上げるロブ・マンフレッド・コミッショナー。完全ウェーバーによって選択肢がだんだんと消えていく様は独特の緊張感がある。(C)Getty Images

昨年のドラフトで指名選手の名前を読み上げるロブ・マンフレッド・コミッショナー。完全ウェーバーによって選択肢がだんだんと消えていく様は独特の緊張感がある。(C)Getty Images

 現地時間7月11日、日本時間12日から2021年のMLBドラフトが3日間にわたって行なわれる。同じドラフトでも、日本とMLBでは大きな違いがある。ここでは、その楽しみ方や今年の注目ポイントを解説しよう。

■「全体1位指名」が持つ重み

 ご存知の通り、日本ではドラフト1巡目は入札抽選制で、指名が重複した場合はクジ引きで交渉権獲得チームを決める。これに対して、MLBは完全ウェーバー制が採用されている。原則として、前年のシーズンで勝率が低かった順番に指名権が与えられ、指名した時点で独占交渉権が確定する。

 この形式によって、日本のそれとはまた別のドラマが生まれる。まず一つは「全体1位指名選手」が、その年のドラフトの象徴的な選手として長く語り継がれるようになるということだ。

 2018年のNPBドラフトで例えてみると分かりやすい。この年は、根尾昂(大阪桐蔭高/現中日)と小園海斗(報徳学園高/現広島)にそれぞれ4球団が競合。さらに藤原恭大(大阪桐蔭高/現ロッテ)にも3球団が競合した。

 だが、完全ウェーバー制では、いの一番に呼ばれる選手は一人しかいない。仮に根尾が全体1位指名となれば、プロ入り後に小園や藤原が根尾を上回る実績を残したとしても、「18年は根尾のドラフト」として語り継がれることになる。同時に、根尾をトップピックとした球団の選択の成否も、いい意味でも悪い意味でも永遠に歴史に刻まれる。
■選択肢が狭まっていく緊張感

 情報戦や駆け引きがより大事になるのも完全ウェーバー制の醍醐味と言えるだろう。指名順が遅い球団ほど、選択肢は少なくなっていく。その中でいかに良い選手を指名するかは、各球団の手腕にかかっている。

 名著『マネーボール』では、ドラフト会議直前にアスレティックスのビリー・ビーンGMとスカウト陣が、あちこちに電話をかけまくるシーンが出てくる。どの球団が誰を指名するのか情報を集めるためだ。そこで得られた情報を基に、ビーンは一喜一憂しながら限られた時間の中で戦略を定め、決断を下す。そして、狙っていた選手を指名できた時には飛び上がってガッツポーズしながら大喜びする。

 これはファンの楽しみ方にも共通する。贔屓球団のお目当ての選手が取られてしまうかもしれないという緊張感を、他の球団が指名するたびに味わう。そして、その選手が望み通り指名されたら、ビーンのようにガッツポーズをしたくなるはずだ。
 
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