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高校野球

「高校2年の夏は一度だけ」甲子園ほろ苦デビューを飾った阿南光・森山暁生に期待する理由<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.17

 中山監督もその影響はあったと打ち明けている。

「全国強豪との練習試合から何かを感じて、チームを作っていくことをやりたかった。それができず、宿泊付きの遠征が今回の甲子園が初めてになったので、選手たちには戸惑いがあったと思います」

 それでも、森山にはこのたった一度の経験も大きな財産になったはずだ。

 というのも、相手の沖縄尚学は確かに強かったが、もう一つ、相手エースの當山渚は森山と同じサウスポーながら、コーナーを使った老獪なピッチングを見せ、一枚上手だった。甲子園の舞台でレベルの高い投手と対戦したことで得られた収穫もあったはずだ。

 森山は自らに確認するかのようにこう語った。

「當山投手は変化球と真っ直ぐの腕の振りがすべて同じで、力むことなく投げ込んでいく投手だと思いました。これからの目標にするというか、なかなか追いつけないと思いますけど、一歩ずつ確実に、當山投手を超えられるような投手になりたいです」
 
 森山にはまだ1年ある。ただ、そう言われることを本人は嫌う。それだけ、彼は今年に賭けてきたのだ。

 高校球児の中には先ばかりを見過ぎて、目先の努力を忘れる選手もいる。しかし実際、目の前のことを頑張れなければ、どの世界に行っても通用しない。

 森山はおそらくそのことを感じているのだろう。

「次って言われるんですけど、高校2年生の夏は一度しかない。高校3年の夏も人生に一度しかない。高校3年生もここに戻ってきてこられるように、今回の経験を生かして次こそは1勝できるようにしたい」

 徳島県の公立校出身の左腕というと、2014~16年に鳴門高で甲子園の計3度出場した河野竜生(現日本ハム)がいる。河野は大舞台での経験を糧に、社会人を経てドラフト1位でプロ入りを果たした。森山は河野のような道を歩めるだろうか。期待の左腕の残り1年に期待したい。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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