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高校野球

「球数を少なくするコツは初球ストライク」“新時代のピッチング”を垣間見せた東明館・今村珀孔の「マダックス」への期待<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.11

佐賀県大会決勝では強豪・佐賀北を完封で下し、東明館を初の甲子園へ導いた今村。初の聖地は苦い中にも手ごたえがあった。写真:滝川敏之

佐賀県大会決勝では強豪・佐賀北を完封で下し、東明館を初の甲子園へ導いた今村。初の聖地は苦い中にも手ごたえがあった。写真:滝川敏之

 電光掲示板に映し出される「球数」を見ながらワクワクした。

 創設33年目にして甲子園初出場を果たした東明館のエース、今村珀孔の飛び受けたピッチングに大きな期待を抱いたからだ。

 5回を終えた時点で、対戦相手の日本航空の先発ヴァデルナ・フェルガスは71球だった。それに対して、今村はわずか55球。0対0の投手戦が続いていただけに、このままいけば「マダックス」が完成できる。そんな予感さえ漂った。

「マダックス」とは、100球未満で完封を達成することを指す。“精密機械”と呼ばれた驚異の制球力を武器に、現役時代にその記録を13度も達成したMLB通算355勝の大エース、グレッグ・マダックスにちなんだ呼び名だ。
 
 昨年からルールが「1週間で500球以内」のルールが導入されたこともあって、高校野球は球数にセンシティブになっているところがある。電光掲示板に球数が表示されるようになったのは、このルールができたからだ。当然、目の前の試合だけでなく、今後数試合を見据えて投手起用を考えなければならない。先発投手の1試合の球数が130球を越えようものなら、監督はメディアからの批判にさらされることもある。こうなると起用する側は、ピッチングの状態を見るよりもまず、球数の計算を先にしてしまう傾向が出てきてしまう。

 そのような背景があるからこそ、今村のピッチングは「高校球児の新たなスタイル」が生まれる期待を抱かせた。

「自分は三振を奪う投手ではなくて、打たせて野手に任せてアウトを奪うタイプ。球数を少なくするコツは、初球でストライクを取ることです」。

 ピッチングと同様に小気味良い今村の語り口からは、自身のピッチングスタイルを確立できている証ともいえる。
 
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