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高校野球

藤浪晋太郎や田中将大ら好投手にも通じる「力強さ」。二松学舎大付・秋山正雲が窮地で見せた“本性”<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.21

 援護をもらった秋山は波に乗り、7回も1死一、三塁のピンチを強気のストレート攻めで無失点。さらに9回に至っては、最初からギア全開だった。6番・穴井から始まる3人の打者に対して、全13球すべてストレートを投じて三者凡退。圧巻の完封勝利を成し遂げた。

 切羽詰まった場面での強い心の持ち方が何より素晴らしかったが、市原監督によれば、秋山は普段の生活ではそうした強気な面は一切見せないのだという。

「普段から強さが出る性格ではない。普通の高校生です。冷静さと強気な気持ちをバランスよくやっていた」

 マウンド上でこそ見せる強さ。ピンチでギアを入れ替える技術は、甲子園を勝ち抜く上では大事な要素だ。かつては2018年夏に金足農業を準優勝に導いた吉田輝星(現日本ハム)も、2019年夏の準優勝投手、奥川恭伸(星稜/現ヤクルト)もそうだったし、さらに遡れば、藤浪晋太郎(大阪桐蔭/現阪神)、島袋洋奨(興南/元ソフトバンク)や田中将大(駒大苫小牧/現楽天)など、甲子園の歴史に残るエースのほとんどは、甲子園のマウンドでも臆することなく、強気さをあらわにしてきた。
 
 秋山は言う。

「ピンチになると集中力、気持ちが高まるというのがあります。今日は投手戦だったので、先制点を取られてはいけない気持ちで投げていました」

 本来は緩急も使えるが、スイッチが入った時の秋山のストレートには、球速以上の力強さを感じる。かつての好投手たちの系譜に連なる秋山の“本性”は、今大会の注目の一つになりそうだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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