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プロ野球

「25年ぶりのリーグ制覇」に向け躍進するオリックス。2014年に2厘差で優勝を逃した投打のベテランの想い

北野正樹

2021.10.11

若手の台頭を喜ぶオリックスの安達。写真:北野正樹

若手の台頭を喜ぶオリックスの安達。写真:北野正樹

 失投しても打たれないこともあるが、狙い通りにいい球を投じても打たれてしまう。データ解析が全盛でも、人知を超えた勝負の世界がそこにはある。比嘉が辿り着いたのは、「しっかりと準備をして試合に臨み、悔いを残さないようにしよう」と、基本を再確認することだった。

 山本由伸や宮城大弥ら若い投手が躍進を支える今季のオリックス。首位争いに臨む心構えを若い投手から聞かれることが多いというが、比嘉の答えは「普段通りでいいよ」とシンプルだ。「ピッチャーのやることは、優勝争いをしていても変わらない。1アウトを取りに頑張っていくだけ。そのためにはいつも通り、しっかりと準備をして臨みましょう、ということ。それしかないんじゃないですか」。38歳、自身の経験からの答えだ。
 
 今季、2塁を守る守備の名手、安達はプロ3年目で経験したあの試合を「もうあんな経験はしたくないと思った日」と振り返る。「2番・遊撃」で先発出場。5打数2安打とチームに貢献したが、松田のいた2塁付近に集まり歓喜の声に包まれるソフトバンクの選手を呆然と眺め、ベンチに引きあげる左翼手・坂口智隆(現ヤクルト)に右腕を引っ張られ、ようやく重い脚を引きずった。 
 
 毎年、目標は「優勝」。国指定の難病「潰瘍性大腸炎」の兼ね合いで、フル出場が難しくなり、昨季オフには「僕を追い越す選手が出てこないと、このチームは強くならない」と若手の台頭を熱望した安達。今季は、2年目の紅林弘太郎が開幕から遊撃の定位置をつかみ、自身は2塁に回った。追い出された形にも「若い選手が出てきて、ポジションを固定することが出来ているから強くなってきた。こんなに早く実現するとは思わなかったが、僕としてはすごくうれしいですね」と、チームのためにライバル関係を超越して喜ぶ。

 ともに、入団以来、Aクラスは14年(2位)の一度だけ。比嘉は「優勝を経験するために現役を続けてきた。この世界に入ったのだから、優勝したい。やるしかない」。安達も「いつまで試合に出られるか分からないので、出ている間に優勝したい」と、7年ぶりにつかんだチャンスを逃すつもりはない。

文●北野正樹(フリーライター)

【プロフィール】きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。関西運動記者クラブ会友。

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