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プロ野球

「若手の登用」と「トレードの活用」――立浪和義・中日新監督に期待する「星野イズム」の継承<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2021.10.29

 一方で、打率は規定打席到達者ではリーグワーストの.223だった。通算2480安打、プロ野球歴代最多487二塁打を積み上げた名打者も、最初はプロの投手に翻弄されていた時期があった。裏を返せば、若手を辛抱強く起用することの大切さを、自身の経験も踏まえて骨身に沁みて理解しているはずなのだ。

 立浪氏以外にも、星野監督は「これは」と見込んだ若手を積極的に抜擢することが多かった。立浪氏が入団する前年には、同じく高卒ルーキーの近藤真市をプロ初登板初先発でいきなり首位・巨人戦にぶつけ、史上唯一の一軍公式戦初登板ノーヒットノーランをお膳立てした。99年は、ドラフト1位ルーキーの福留孝介を正遊撃として起用。当時の福留は守備のミスが多かったが、それでも我慢して使い続けた。その年も、立浪氏の1年目と同じようにドラゴンズはリーグ優勝を果たしている。星野監督のそうした姿勢を、立浪氏は選手としてずっと見てきているはずなのだ。

 2022年の満年齢を見ると、郡司が25歳、パンチ力が売りの石垣雅海が24歳、快足自慢の高松渡が23歳、根尾と石橋が22歳、石川が21歳、岡林が20歳。さらに、ドラフト1、2位で指名したブライト健太、鵜飼航丞がともに23歳。新人の2人はともかく、それ以外は全員、一軍で勝負できる時期を迎えている。

 実際、立浪氏は、石川や根尾について「打てればポジションは後からついてくる」といった趣旨の発言をしていて、このあたりは与田前政権よりも柔軟性が感じられる。もちろん、若手を使っても即結果が出るとは限らない。それでも、まさに星野監督がそうだったように、多少の失敗や試行錯誤には目をつむってでも若手を起用していくことが長い目で見ればチーム強化につながるはずだ。
 
 もう一つはトレードの積極活用だ。星野監督は第1次政権でも第2次政権でも、球界をあっと言わせるようなトレードを次々に仕掛けていた。監督就任直後の86年オフには、牛島和彦を含む4人と落合博満(当時ロッテ)の大型トレードをまとめた。88年オフには、親会社同士の関係から半ばタブー視されていた巨人とのトレードを成立させて西本聖を獲得。97年オフには「広いナゴヤドームに合う選手」を求めて、主砲の大豊泰昭、矢野輝弘との交換で関川浩一、久慈照嘉を獲得した。

 さすがにこれほど派手なトレード攻勢は難しいとしても、チームを強化するための一つの選択肢として、効果的に活用していきたい。現在、ドラゴンズでは外野の両翼と二塁が大きな弱点となっている一方、捕手はやや人材がダブついている。トレードはチームに活気をもたらすと同時に、こうしたポジション間の不均衡を是正する効果もある。就任1年目は個々の選手の能力を見極める意味でもあまり積極的には動かないかもしれないが、将来的にはPL学園人脈も含めた幅広いコネクションを活用しながら動いてもらいたい。

 ドラゴンズの再建はまだ道半ば。就任1年目からすぐ優勝争いに加わることは難しいかもしれない。それだけに、じっくり腰を据えてチーム改革に取り組んでほしい。ちなみに、ドラゴンズ生え抜きの監督で優勝経験があるのも星野氏だけ。立浪新監督がチーム再建を果たして優勝を勝ち取ったら、"ベースボール・タウン"名古屋が華々しく復活するはずだ。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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