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プロ野球

反省すべき送りバント失敗のはずが……流れを変えたヤクルトの“致命的ミス”【氏原英明の日本シリーズ「記者の目」】<SLUGGER>

氏原英明

2021.11.21

福田の送りバントが呼び込んだサヨナラ劇。オリックスは2度もリードを奪いながら逆転されてしまった。写真塚本凛平(THE DIGEST写真部)

福田の送りバントが呼び込んだサヨナラ劇。オリックスは2度もリードを奪いながら逆転されてしまった。写真塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 試合は両チームの先発投手がともにゲームメイクする形で進んだ。

 オリックスの山本由伸は本来の調子とはまったく違う出来で、ヤクルトの奥川恭伸も大舞台にかなりの緊張感があった。しかしそれでも、2人は要所を締めて前半5回はゼロ行進と試合を作った。

 そんな中、試合が動いたのは6回表だった。1死一、二塁で6番の中村悠平が山本のストレートをセンター前に弾き返して1点を先制した。だが、オリックスも7回裏に若月健矢の代打で登場したモヤが起死回生の同点本塁打を放って、試合は振り出しに戻る。

 ここからはブルペン勝負となったが、先に勝ち越したのはヤクルトだ。8回表にランナーを1人置いて、4番の村上宗隆がヒギンズからバックスクリーンに放り込んだ。

 オリックスからすれば、ここでの2失点は致命的かとも思えたが、9回表に登板した比嘉幹貴が1番の塩見泰隆から始まるヤクルト打線を三者凡退。それも、青木宣親、山田を連続三振に抑えたのは大きかった。
 
 オリックスは9回裏に、先頭の紅林弘太郎がライト前ヒットで出塁、続く代打のジョーンズが四球で粘って、冒頭の福田のバントの場面を迎えた。

 無死満塁となった後、2番の宗佑麿の中前適時打で2者が生還、同点となった。そして最後は3番の吉田正尚がセンターオーバーのサヨナラタイムリーで試合を決めた。

「しびれましたね。宗がこれまでにないくらい球場を盛り上げてくれたので、その勢いで行かせてもらいました。5回裏のチャンスの場面では力がなくて外野を抜けなかった。最後は抜けてくれて安心しました。チーム全体として1年間、あきらめない戦いというのをできていたので、この日本シリーズの初戦でできたのは、大きな勝ちだと思います」

 殊勲の吉田は大逆転の勝利をそう噛み締めた。

 返す返すも、9回裏のミスが試合を大きく動かした。「粘りのオリックス」でペナントを制したパ・リーグ王者に、ヤクルトが点差を考えた守備ができなかったのは致命的だったと言えるだろう。

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』『甲子園は通過点です』(ともに新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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