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プロ野球

暴力事件を起こした大砲に20年最多勝右腕、快足自慢の韋駄天も【パ6球団の“逆MVP”】<SLUGGER>

出野哲也

2021.12.16

▼ソフトバンク:周東佑京
 何もかもが上手くいかなかったソフトバンクにあって、一番何もかも上手くいかなかった選手だろう。前年に大きく成長したはずだったバッティングでは、打率2割そこそこ。何より痛かったのが、最大の武器である足までもスランプに陥ってしまった点で、代走に出ての牽制死、試合終了につながる暴走など、悪い意味で印象に残る場面が多かった。

 守備でも精彩を欠き、二塁のレギュラーポジションを手放しただけでなく、体調面でも6月に右手人差し指の骨折で1か月離脱。8月に痛めた右肩も思いのほか重傷で9月に手術、全治6か月と発表された。
 
▼日本ハム:中田翔
 西川遥輝と大田泰示のノンテンダー組や渡邊諒ら、他球団なら「一番の期待外れ」の有力候補になり得る選手が何人もいた。それでもなお、中田がぶっちぎりでの不名誉な受賞者だ。チームメイトへの暴力行為で追放されただけでも言語道断だが、成績そのものも目を覆わんばかりの惨状だった。

 3億円をはるかに超える年俸を手にしながら39試合でOPS.577、ホームランも4本のみ。中田在籍時のチーム成績は30勝46敗で勝率.395だったのが、退団後は26勝23敗で.531と劇的に改善されたのは、偶然だったようには思えない。

▼西武:金子侑司
“山賊打線”も今では見る影もないが、得点力が低下した理由は長打力の減退だけではない。1番打者の出塁率が.292しかなかったように、秋山翔吾の退団以来、テーブルセッターの人材不足が深刻化しているのだ。金子はその期待を背負っていた一人で、開幕当初は1番で使われていたが、すぐルーキーの若林楽人にポジションを明け渡した。

 もともと盗塁は多くとも出塁率は高くなく、リードオフマンで起用するには難のあった選手だが、今季は自己最悪の.243まで下降した。売り物であるはずの足も9盗塁で失敗9回とさっぱりで、後半戦は出場機会自体を失ってしまった。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

 

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