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プロ野球

佐々木朗希の完全試合で光った高卒ルーキー・松川虎生の「芸術的リード」。吉田正尚らを牛耳った配球の妙<SLUGGER>

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2022.04.11

 最終的に13連続奪三振まで伸ばした佐々木だったが、7回に完全試合があと一球で幻に終わるシーンがあった。先頭の1番・後藤駿太を迎えた場面で、カウント3-0となったのだ。3球連続でストレートが外れた後、佐々木は少し間を置くと、松川のサインに首を振った。おそらくこの試合で唯一と言っていい場面だった。

 しかし、次のサインに納得した怪物はストレートでストライクを稼ぐと、続く5球目も速球で力のないライトフライに打ち取って窮地を脱した。そして吉田に3打席目が回ってくる。カウント2-1、不利なカウントになったが、ここで安易に速球を投げずフォークで空振りを奪って2-2。

 5球目、インコースに構えた松川のミットに、完璧に163キロのストレートを投げ込んで見逃し三振に打ち取ってみせた。それまでの2打席は外角へのフォークを決め球としていた中で、内角ストレートはおそらく吉田の頭にもなかったのではないか。もしかしたら松川は、最高の場面で使おうとあえて取っておいたのかもしれない。そう思わせるほどの見事な配球だった。
 
 感染症対策もあって声は上げられないが、「あと一人! あと一人!」のコールが聞こえてくるほどの感覚すらあった9回2死。オリックスはここで昨季の本塁打王・杉本裕太郎を代打に送った。前日まで17打席連続無安打の不振でスタメン落ちしていた大砲との対戦。ここでも松川のリードが冴える。

 6回の宜保翔から、バッテリーは8人連続で初球にストレートを投げていた。おそらく杉本もそれを読んでいてのだろうが、佐々木と松川が選択したのはフォーク。強振した杉本をあざ笑うかのよう空振りを奪う。2球目もフォークでストライクを稼ぐと、最後も伝家の宝刀フォークで空振り三振を記録し、完全試合を達成したのだった。

「最後まで松川を信じて投げました」

 試合後、佐々木は後輩に感謝の言葉を述べた。振り返れば、試合を通じてほとんど首を振ることがなく、松川のミットをめがけて投げていた姿からは、2歳年下の女房役への揺るぎない信頼感が見え隠れしていた。松川にしても、打者の機微を察知しながら、ストライクゾーンで勝負し続け強気な配球で、結果的に球数を減らすことにも貢献していた。

 20歳の佐々木朗希、18歳の松川虎生による共同作業で生まれた芸術品は、記録にも、記憶にも残る名試合となった。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)

【動画】佐々木が脅威の奪三振ショー! オリックスで見せた“歴史的ピッチング”をチェック

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