「日本は、世界的に見ると実力では1位の国だと知られていますが、野球のマナーという点ではいい評価を得られていません。相手へのリスペクトが足りていない」
そう語っていたのは元アマチュア野球の規則委員長・麻生紘二さんだった。
国際大会での日本の評判が悪いことは、今に始まったことではないらしい。
過去の例で振り返ると、シドニー五輪において日本の選手がヒットを打つたびに、ベース上でポーズを取っていた。これが相手チームへのリスペクトがされていないと国際大会で問題視された。
2012年のアンダーカテゴリーでの世界大会では、スタンドで配球を取っていたスタッフがボールボーイにメモを渡してベンチに届けるということが発覚。規則には禁止とは書かれていなかったが即刻、注意された。4、5年前の若年層世代の世界大会では日本チームが優勝。塁上にいる走者がサインを伝達していたことが報道され、少し話題となった。
一昨年の秋のUー18W杯では、日本代表が7対0と大量リードしている試合の終盤で盗塁を成功させた。これに相手チームが憤慨して試合が中断。事態を重く見た球審が警告試合を宣告した。
日本がやってきた行為は規則には抵触していなかったのだが、野球のグラウンド上での「マナー」という部分において、学ぶべきところが日本にはあると麻生さんは話されていた。
スポーツマンシップ、フェアプレーに対する認識が足りていない。その背景には、勝敗ばかりにとらわれ、野球の楽しさや魅力を伝えるということへのマインドが不足しているからではないか。
「僕ら台湾だけでなく、アジアのチームは真剣になりすぎているのかなと思います。試合に集中しているんですけど、周りが見えていない。アメリカや中南米の人たちは周りをみながら楽しんでいる。野球をやっているのが楽しいと思ってプレーしていますよね」
そんな話をしていたのは巨人の陽岱鋼選手だ。
子供の頃からメジャーに憧れを持っていた陽選手は、メジャーとアジアの野球の違いについて尋ねると、そんな違いを感想として語ってくれたものだ。
国際大会は国の威信を懸けて戦っているのは間違いない。
「負けられない戦い」というフレーズは、代表チームのユニフォームを纏うことの意義を明らかにしているかもしれないが、一方で野球の魅力、素晴らしさの発信というマインドももう少し持つべきではないか。
ルッカー選手が丸をたたえたあの行為。
野球本来の楽しみとは、自チームだけでなく、スタジアムにいるものたちすべてで共有するものだということを伝えてくれるものだった。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
そう語っていたのは元アマチュア野球の規則委員長・麻生紘二さんだった。
国際大会での日本の評判が悪いことは、今に始まったことではないらしい。
過去の例で振り返ると、シドニー五輪において日本の選手がヒットを打つたびに、ベース上でポーズを取っていた。これが相手チームへのリスペクトがされていないと国際大会で問題視された。
2012年のアンダーカテゴリーでの世界大会では、スタンドで配球を取っていたスタッフがボールボーイにメモを渡してベンチに届けるということが発覚。規則には禁止とは書かれていなかったが即刻、注意された。4、5年前の若年層世代の世界大会では日本チームが優勝。塁上にいる走者がサインを伝達していたことが報道され、少し話題となった。
一昨年の秋のUー18W杯では、日本代表が7対0と大量リードしている試合の終盤で盗塁を成功させた。これに相手チームが憤慨して試合が中断。事態を重く見た球審が警告試合を宣告した。
日本がやってきた行為は規則には抵触していなかったのだが、野球のグラウンド上での「マナー」という部分において、学ぶべきところが日本にはあると麻生さんは話されていた。
スポーツマンシップ、フェアプレーに対する認識が足りていない。その背景には、勝敗ばかりにとらわれ、野球の楽しさや魅力を伝えるということへのマインドが不足しているからではないか。
「僕ら台湾だけでなく、アジアのチームは真剣になりすぎているのかなと思います。試合に集中しているんですけど、周りが見えていない。アメリカや中南米の人たちは周りをみながら楽しんでいる。野球をやっているのが楽しいと思ってプレーしていますよね」
そんな話をしていたのは巨人の陽岱鋼選手だ。
子供の頃からメジャーに憧れを持っていた陽選手は、メジャーとアジアの野球の違いについて尋ねると、そんな違いを感想として語ってくれたものだ。
国際大会は国の威信を懸けて戦っているのは間違いない。
「負けられない戦い」というフレーズは、代表チームのユニフォームを纏うことの意義を明らかにしているかもしれないが、一方で野球の魅力、素晴らしさの発信というマインドももう少し持つべきではないか。
ルッカー選手が丸をたたえたあの行為。
野球本来の楽しみとは、自チームだけでなく、スタジアムにいるものたちすべてで共有するものだということを伝えてくれるものだった。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。