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プロ野球

佐々木朗希ら若手のための投球制限は「過保護」なのか? メジャーでも話題となる“金の卵”を守る育成法の是非<SLUGGER>

出野哲也

2022.05.07

現在は上半身のコンディション不良から2軍で調整を続けている奥川。ヤクルトの日本一に貢献した右腕も、球数を制限した指導法を受けてきた。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

現在は上半身のコンディション不良から2軍で調整を続けている奥川。ヤクルトの日本一に貢献した右腕も、球数を制限した指導法を受けてきた。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

 確かに、佐々木に対していつまでも現状の起用法を続けるわけにはいかない。事実、開幕前に井口監督は投球数について「開幕の頃は100、それ以降は120くらい」と述べている。つまり、徐々に段階を踏んでいき、肉体的に完成したと判断すれば中6日でローテーションの一角を担い、1試合120球以上投げる可能性もあり得るのだ。

 また、佐々木のように160キロを連発するような投手の場合、肉体にかかる負荷が半世紀前の投手たちとは比べものにならないほど大きく、より丁寧に扱う必要もある。ゆえに「最近の投手は弱くなった」とは一概には言えない。

 一方で、メジャーで球数制限が広まりだしたのは、ドラフトで指名された選手の契約金が跳ね上がり始めた頃と時期を同じにしている。選手の健康に対する理解が深まったから、というだけでなく「金の卵」を潰さないようにとの配慮も含まれているわけだ。

 そうして守られた投手は大勢いる。だが逆に、練習量や登板回数が足りないため必要な技術が身につかず、ポテンシャルが十分に引き出されない可能性もある。金の卵を大事にしようとするあまり、孵化に失敗しているかもしれないのだ。

 誰もが米田のように無尽蔵のスタミナを誇り、大きな故障にも見舞われず20年以上第一線で投げられるわけではない。往年の投手でも、現在のような起用法であれば、長く活躍できた者は何人もいたはずだ。

 故障はしない方が本人にもチームにとっても良いのは当然。そんな模範を球界の頂点に立つプロ野球が示すことで、アマチュアでも改革が進めば、早くから若者の才能が芽を摘まれることもなくなる。その点で見ても、「投手を大事に」という方向性自体は正しい。

 とはいえ、だ。人間の肉体はそれぞれ異なる。どの投手にも同じ育成パターンが当てはまるわけではない。キャンプで何百球と投げ込む九里亜蓮(広島)の調整法も間違いだとは言えない。大切なのは指導者が一方的に意見を押しつけず、各投手に合った育成法を見出すことだろう。

文●出野哲也

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