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プロ野球

ペドロ、西口、そして延長12回完全で黒星のハディックス――大野雄大だけじゃない「延長で完全試合を逃した悲劇の投手たち」<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.05.07

 1995年6月3日。当時エクスポズ(現ナショナルズ)にいた23歳のマルティネスは、首位打者に8度輝いたトニー・グウィンや、翌年に打率.326&40本塁打でMVPを獲得するケン・カミニティ擁するパドレスの強力打線を相手に、完璧なピッチングを披露した。9回で9三振を奪うパーフェクトピッチング。外野フライ2つとファーストゴロに倒れたグウィンも、「『見事だ』と『素晴らしい』以外に言うことはない」と脱帽するばかりだった。

 だが、エクスポズ打線もパドレス先発のジョーイ・ハミルトンから点が取れない。初回に2死満塁の好機を作りながら、後に阪神でもプレーする6番のトニー・タラスコがセカンドゴロに倒れて無得点。だが、延長に突入した直後の10回表、1死一、二塁の好機を作ったエクスポズはようやく1点をもぎ取ってマルティネスの快挙達成を援護した。

 しかしマルティネスもパーフェクト目前で力んだか、10回裏先頭のビップ・ロバーツに2球連続でボールを投じてしまう。そして3球目、ロバーツはライトのライン際へ鮮やかにボールを運ぶ二塁打を放ち、若き剛腕の快挙を打ち砕いた。マルティネスもこの試合以降、完全試合どころかノーヒッターすら達成の機会に恵まれなかった。
 
 西口もマルティネスも“パーフェクト”は27人で打ち止めとなったが、延長12回、36打者を完全に抑えた投手もいる。1959年5月26日、ハービー・ハディックス(パイレーツ)はブレーブス戦で快投を披露した。

 この日のハディックスは、速球とスライダーのコンビネーションで凡打の山を築く。当時のブレーブスはハンク・アーロン、エディ・マシューズ、ジョー・アドコックら名だたる強打者がいたが、生涯最高の出来だったハディックスにとっては問題にならなかった。9回までに8つの三振、フライとゴロがそれぞれ9個とブレーブス打線を完璧に抑えたが、パイレーツ打線も8安打を放ちながらホームが遠かった。

 その後も延長12回までブレーブス打線を抑え続けたハディックスは、13回裏の先頭打者も三塁ゴロに仕留めた……と思われたが、三塁手が送球エラーを犯してパーフェクトは潰える。だが、真の悲劇はここからだった。マシューズが送りバントの後、アーロンを敬遠して1死一、二塁になった直後、アドコックが右中間フェンスに直撃するサヨナラタイムリー二塁打(一時は本塁打と認定されたが後に二塁打に修正)。ハディックスはパーフェクトどころか敗戦投手になってしまった。

 天国から地獄へと叩き落とされたハディックスだが、それでも当初は「最初の9イニングを完全に抑えた」として、記録上は完全試合を達成したとみなされていた。だが、91年になって完全試合の条件が「試合終了まで1人の走者も出さないこと」に変更されたことで取り消しになってしまった。

 西口、マルティネス、大野も確かに気の毒だったが、あらゆる意味で快投が報われなかったハディックスの不運さは群を抜いている。

構成●SLUGGER編集部
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