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MLB

大谷のフェンウェイでの活躍からつながった「MLBの救世主」ベーブ・ルースとの奇妙な歴史の偶然<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.05.14

 この日、「投手・ルース」は、5.1回を投げて9安打3失点(自責点2)、3三振1四球という内容で、勝敗はつかなかった。そして、ルースはマウンドを降りた後、レフトに入って試合に出場し続けた。

 そして9回裏、一死走者なしから左越えにサヨナラ本塁打を放ったのである。

 この日、「打者・ルース」は3打数1安打、1本塁打1打点だった。

 ルースが「投打二刀流」でプレーした最後のシーズンでもある1919年は、和暦では大正8年である。前年に終わった第一次世界大戦の講和会議がフランスのパリで行われ、白ロシア・ソビエト社会主義共和国の樹立やドイツ労働者党の結成など、後の第二次世界大戦へつながる社会運動が世界各地で起こるなど、不穏な時代でもあった。
 メジャーリーグでも、1919年は不穏な動きがあった。

 この年、ジャクソン擁するホワイトソックスは2年ぶりにア・リーグを制してレッズとのワールドシリーズに出場した。当時、公然と行われていた野球賭博で「ホワイトソックスが圧倒的に有利」と伝えられる中、チームは3勝5敗で敗退した。

 シリーズ終了後、ギャンブルで金を失った人々を中心に「ホワイトソックスの選手たちが八百長をしたから負けた」という声が高まった。約1年後、ジャクソンを含む8選手は大陪審の審問会に出席することになった。

 審問会で、8人の選手たちは八百長の存在を認めた。一方でホワイトソックスの当時のオーナー、チャールズ・コミスキーが選手たちの年俸を不当に抑制していたことが明らかとなった。選手たちはユニフォームのクリーニング代を負担させられるなど、ひどい待遇を受けていた。

 当時のメジャーリーガーは薄給で、タイ・カッブ(タイガースの殿堂入り選手)らスター選手も八百長に関与していたと言われていた。そんな事情もあって、その後の刑事裁判では、陪審員らは被告人である選手たちに無罪判決を下した。
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