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MLB

ダルビッシュの「奪三振」と田中の「制球力」は歴史的な水準――MLB通算1000投球回到達で見えてきた2人の特徴

宇根夏樹

2019.11.19

 中でも、田中が優秀なのは与四球率だ。田中より上位にいる49人の多くは、19世紀に活躍した投手が中心。ここ100年(1920~2019年)に限定すると14位、ここ50年(1970~2019年)なら8位となる。また、どのスパンの与四球率ランキングでも、僅差で田中の一つ下の順位にいるのは、“精密機械”の異名を取ったあのグレッグ・マダックスだ。そのことだけでも、田中の数字がいかに高水準かが分かる。

 改めて2人の通算成績を整理すると以下のようになる。
●奪三振率
ダルビッシュ 11.29(1位)
田中 8.74(41位)

●与四球率
ダルビッシュ 3.29(824位)
田中 1.79(50位)

●K/BB
ダルビッシュ 3.38(35位)
田中 4.74(3位)
 もっとも、田中には明確な弱点がある。9イニング当たりの被本塁打数を見ると、1.34で1246人中1234位(!)とワースト級なのだ。ちなみにダルビッシュも1141位の1.13と高めではあるが、田中ほど極端ではない。本拠地ヤンキー・スタジアムは本塁打が出やすく、また近年のフライボール革命の影響も少なからずあるだろう。

 いずれにしても、ダルビッシュは奪三振、田中はコントロールと、世界中から超一流投手が集まるメジャーリーグで2人とも明確なセールスポイントを持っている点は素晴らしい。

 通算1000イニングという括りからは離れるが、今シーズン後半戦のダルビッシュは奪三振だけでなく、コントロールも素晴らしかった。81.2イニングで与えた四球はわずか7つ、与四球率0.77を記録した。一方で奪三振率も13.00、K/BBは16.86と驚異的な水準に達している。ちなみに、K/BBのシーズン記録は14年にフィル・ヒューズが記録した11.63だ(1900年以降)。

 もし、ダルビッシュが来シーズンもこの好調を持続できれば、日本人投手初のサイ・ヤング賞も見えてくる。これまでの最高順位は、ダルビッシュが2位(13年)、田中が7位(16年)だ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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